プロ野球選手から「公認会計士」に…戦力外通告を受けた元阪神投手の「後半生」

オフに消えた選手たちの「その後」

「来季は契約しません」

憧れのプロ野球選手になっても、実績が残せなければクビを切られる。小さいころから野球一筋で生きてきたぶん、社会に放り出されたときには人一倍の苦労が待っている。'97年にドラフト6位で阪神タイガースに入団した奥村武博(43歳)は、'01年に戦力外通告を受けて現役を引退した。

 

引退後、多くの選手たちは野球に関わる仕事に就く。だが、奥村はプロ野球選手出身として日本初の公認会計士になった。どういう道のりを歩んできたのか話を聞いた。

「'01年は怪我も多く、2軍でもあまり投げることができていませんでした。だから、なんとなく今年は戦力外通告を受けそうだなっていうような感覚は持っていたのです。シーズン終盤に自分が肩を痛めていたこともあり、『このタイミングだったら今まで自分が投げていたな』というシチュエーションで声がかからなくなっていました」

当時22歳だった奥村は独身だったこともあり、現役引退後のビジョンは特になかったという。人生が一変したのは、'01年9月30日の夕方だった。

「練習が終わって寮に帰って部屋にいたら、普段、鳴らない部屋の内線が鳴ったんです。鳴った瞬間に『あ、来たか』っていうような感覚を持った記憶があります。内線を取ると場所を指定されて『来てくれ』と。寮の中で普段、入ったことがないような部屋に呼ばれたので、いっそう『戦力外通告かもしれない』と思いました」

不安な思いを抱えてドアを開けると、ミーティングルームのような部屋に球団関係者が2人座っていた。ここで、「来季は契約しません」と告げられたという。予感はしていたとはいえ、相当なショックを受けていたので、それ以外の言葉は覚えていない。気がついたら部屋に戻っていた。

「小さい頃から夢に見ていたプロ野球生活が、一瞬で終わってしまった事実を受け止めきれませんでした。翌日からユニフォームを着て練習できないんです。本隊は鳴尾浜の二軍練習場で練習しているんですけど、自分はそこに行かないで、寮の部屋にいるわけです。声や音だけ聞こえてくる。これがしんどかったです」

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