高橋大輔は「イメージを全て実現させてくれる選手」振付師、ブノワ・リショーが抱く日本人スケーターへの特別な思い
グランプリシリーズの第4戦目までを終えたフィギュアスケートの2022-2023年シーズンは、渡辺倫果や住吉りをん、三浦佳生や佐藤駿といった、輝きを放つ新たな才能に注目が集まるシーズンとなっている。
だが、その一方で、バンクーバー五輪の男子シングル銅メダリストで、アイスダンス転向3季目を迎えたベテランの高橋大輔は、デニス・テン・メモリアルチャレンジ(10月28日カザフスタン)で、村元哉中と息の合った滑りを披露し、見事に優勝。アイスダンス選手としては初のタイトルを獲得した。※高橋大輔の高は正しくは「はしご高」(以下同)
高橋が現役復帰を果たした2018〜2019年シーズンにプログラムの振り付けを担当し、今年2月の北京五輪では、並み居る強豪選手を抑えて坂本花織を銅メダリストに導いたフランス人振付師のブノワ・リショー氏に、高橋大輔と過ごした当時のエピソードや、自身が歩んだこれまでのキャリアについて伺った。

振付師に導いたのは「心の声」
――まずは、ブノワさんのキャリアからお伺いしたいと思います。アイスダンスの選手として活躍された後、振付師の道を選んだ理由を教えてください。
「振付師になろう」と思ったきっかけを一言で表すのは、私にとってとても難しいことです。幼い頃に、フランス・アヴィニョンの“村”と言っても遜色がないほどの小さな町に生まれた私は、とりわけ裕福ではない少年時代を過ごしました。教養のある家庭で生まれ育ったわけではありませんでしたが、なぜか幼少期からダンスは得意で、誰かに習ったり、特別な教育を受けなくとも、上手に踊ることができました。改めて振り返ると、時折聞こえてくる自分自身の心の声に忠実に従い、歩んできた結果なのかなと思います。

私は、スケート選手のキャリアを終えた20代後半頃に、振り付け師としてのキャリアを歩み始めました。この時も、「誰かの振り付けをしたり、音楽を選ぶことが出来たら、もしかしたら引退後もスケートに関われるかもしれない」と思いが芽生え、実際にやってみると、それが自分の気持ちに沿うものだと気づけた。
その後も、自身の気持ちに寄り添いながら積み重ねてきた経験が、やがて私の役立つスキルとなり、結果として今の職業に繋がっている。すべては、自身の心の声を素直に聞いてきたなかでの自然な流れだと思っています。