2022.12.05

今年はラニーニャで厳冬に!? 季節予測研究の最前線へ

気象災害からマラリア対策まで!

今年はエルニーニョの年だから、暖冬になるよ!? そんな話題を聞くことがあります。でも、エルニーニョやラニーニャって……なに?

太平洋の熱帯域の海水温が通常とは異なる状態になるものが「エルニーニョ現象」と「ラニーニャ現象」です。これは、ひとたび発生すると、世界中に気候の変動をもたらします。

実は、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)では、エルニーニョ現象やラニーニャ現象の発生予測を毎月発表しています! しかも予測期間は2年先まで。これほど長期の予測を毎月リアルタイムで行っているのは世界でもJAMSTECだけだそうです。

そこで、付加価値情報創生部門 アプリケーションラボ 気候変動予測情報創生グループの野中正見グループリーダーに、このエルニーニョ現象やラニーニャ現象の仕組み、そして、その発生予測はどのように行っているのかなど、基礎の基礎から聞いてみました。

【写真】野中正見グループリーダーJAMSTEC・野中正見グループリーダー(写真撮影・提供:JAMSTEC)

貿易風が弱くなるとエルニーニョ現象が発生

──「エルニーニョ現象」が起きると、日本は冷夏や暖冬になりやすいと聞きました。そもそもエルニーニョ現象とは、どんなものなんですか?

太平洋の熱帯域には、いつも貿易風と呼ばれる東風が吹いています。この貿易風によって表面の海水が西のほうへと吹き寄せられるため、西側に温かい海水が溜まります。表面の海水が貿易風で西側に吹き寄せられると、それを補うように東側では下から冷たい海水が湧き上がってきます。太平洋の熱帯域の海面水温は、西側が温かくて東側は少し冷たい。これがふだんの状態です(図1・上)。
ところがなんらかのきっかけで貿易風が弱くなると、海水を吹き寄せる力が弱まり、西に溜まっていた温かい海水が東へと移動していきます。これが「エルニーニョ現象」です(図1・下)。

【図】平常時とエルニーニョ現象が起きたときの太平洋熱帯域図1:平常時(上)とエルニーニョ現象が起きたとき(下)の太平洋熱帯域(図:野中正見/JAMSTEC 提供をもとに作成 鈴木知哉)

この図のように、温かい海水がある場所では水蒸気が大量に蒸発するため、さかんに積乱雲ができます。エルニーニョ現象が発生すると、温かい海水の場所が移動するため、積乱雲ができる場所も移動します。その結果、雨が降る場所がいつもと変わり、大気の循環の仕方も変わります。

エルニーニョ現象で冷夏・暖冬になりやすい理由!

その影響は熱帯域だけでなく、遠く離れた場所の気圧配置にも地球規模でおよびます。

たとえば日本では、エルニーニョ現象が起きると、夏に南から太平洋高気圧が日本まで張り出してこなくなり、気温が低くなる傾向があることが知られています。一方、冬には日本上空を吹く偏西風の流れが変わるため、シベリアからの寒気が日本付近まで南下しづらくなり、暖冬になる傾向があります。

──エルニーニョ現象が起きると冷夏・暖冬になりやすいのは、そういう仕組みだったんですね。