2022.12.05

今年はラニーニャで厳冬に!? 季節予測研究の最前線へ

気象災害からマラリア対策まで!
野中 正見

世界で唯一、2年先まで予測

――アプリケーションラボのウェブサイトを見ましたが、エルニーニョ現象などの予測をしている「季節ウォッチ」というコーナーが興味深かったです。

アプリケーションラボでは、2年先までエルニーニョ現象やラニーニャ現象の発生を予測しています。最大で2年先までの予測を高精度で行っているのは、世界で私たちだけです。
エルニーニョ現象とラニーニャ現象は、地球規模で大気と海洋の状態が密接に絡み合って起きる現象です。そのため予測には、大気と海洋の両方を地球全体でしっかりシミュレーションすることが必要になります。最大で2年先までの予測を、私たちは毎月計算して、発表しています。

──毎月!? 計算は大変ではないですか?

そうですね。世界中から観測データが集まるのに1週間。シミュレーション用のモデルに観測データを入力して、最初の計算結果が出るまでに1週間。さらに条件を少しずつ変えて、いろんなシミュレーションを行ってみるのに1週間かかるという感じです。
それを毎月行って、予測結果を発表しています。また、3ヵ月に一度、予測結果だけでなく、結果を解説する記事を「季節予測」として発表しています。

【図】エルニーニョ現象の季節予測図3:エルニーニョ現象の季節予測。縦軸はエルニーニョ指数(プラスはエルニーニョ傾向、マイナスはラニーニャ傾向)、横軸は時間(月)。黒線が観測値、複数のカラー線が36個の異なる条件で実験した予測値で、紫線が36個の予測値の平均値。(提供:JAMSTEC・アプリケ―ションラボ サイト内「季節ウォッチ」より)

予測のために行う計算の量は莫大なものになります。2年先を予測するにしても、まずは現在の観測データを元に10分先を予測して、今度はそれを元にさらに10分先を予測するといった計算を2年先まで繰り返していくことになります。しかも地球規模で計算するわけですから、ものすごい計算量ですね。

JAMSTECには、それをこなせるスパコン「地球シミュレータ」と、精度良く予測ができる大気海洋結合循環モデル「SINTEX-F」があるんです。

進化を続ける予測モデル「SINTEX-F」

──SINTEX-Fは、どうやって予測を行うんですか?

SINTEX-Fは、コンピューター上の仮想地球の海と大気を細かい格子に分けて計算し、エルニーニョ現象などの長期予測を行います。格子を細かく分けるほど解像度(どれくらい細かく表現出来るか)が高くなり、精密に予測できるようになります。現在のSINTEX-Fは、大気の水平分解能がおよそ100キロメートル、海洋の分解能が50〜200キロメートルとなっています。

SINTEX-Fを開発し、長期予測を開始したのは2005年です。それ以来、SINTEX-Fは海氷を考慮に入れるようにしたり、解像度を高めたりしながら、予測精度を高めてきました。格子を細かくしていくと、全体の計算量が増えるという問題に加えて、バランスが微妙にずれてきて、そのままでは予測精度が下がってしまうという大問題が生じます。そのため格子を細かくするたびに、世界各地の海と大気の状態を正しく再現できるように、バランス調整を行います。

【図】SINTEX-Fによる熱帯域の海面水温と風の予測図4:SINTEX-Fによる熱帯域の海面水温と風の予測(提供:JAMSTEC・アプリケ―ションラボ サイト内「APL Virtualearth」より)

SINTEX-Fはそういった改良を2005年以来ずっと続けてきました。その結果、とくに熱帯の海と大気の状態を非常によく再現できるモデルになりました。そのおかげで、エルニーニョ現象の発生を2年先まで高精度に予測できるようになったんです。

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