2022.11.28

中高生に去年は「陰キャの自己慰撫」本が流行ったが、今年の象徴はコムドットやまと『聖域』

毎年6月に実施され、11月に発表される、全国学校図書館協議会による「学校読書調査」の2022年の結果が公表された。小4~高3の「今の学年になってから読んだ本」から見える変化やトレンド、今年の特徴とは? ここでは高校生および非小説[ノンフィクション]に関して扱う(全3回の第3回)

高校生が読んだ本

上が男子、下が女子、図版は「学校図書館」(全国学校図書館協議会)2022年11月号38p、39pより引用
 

学校読書調査で高校生がよく読むジャンルや作家として確認できるものは、中学生とそれほど変わらない。

・泣ける青春/恋愛ものライト文芸(『余命10年』『桜のような僕の恋人』など)
・定番化しているラノベ(『ソードアート・オンライン』、西尾維新の〈物語〉シリーズ、『Re:ゼロから始める異世界生活』、米澤穂信の古典部シリーズなど)
・本屋大賞受賞作(『かがみの孤城』『そして、バトンは渡された』など)
・ボカロ小説『告白予行練習』
・『人間失格』
・東野圭吾
・住野よる
・短編集(『5分後に意外な結末』など)

である。

中学生と違うのは、ラノベで男子は『ようこそ実力主義の教室へ』『86-エイティシックス-』、女子は『わたしの幸せな結婚』が入ること、女子は韓国エッセイ『私は私のままで生きることにした』や知念美希人作品(高3女子で天久鷹央シリーズと『硝子の塔の殺人』)が前年までも、今年も入っていることだ。

今年の変化としては、高1男子に『小説仮面ライダー』、ミステリーでは『屍人荘の殺人』(高1男子)、『城塚翡翠』シリーズ(高2男子)、『むかしむかしあるところに、死体がありました。』(高1女子)、『元彼の遺言状』(高3女子)、短編集では小説家になろう発の村崎羯諦(ぎゃてい)『余命3000文字』と『△が降る街』が入ったことである。

2021年は「TikTok売れ」「BookTok」がメディアでさかんに報じられたものの、2022年になるとあまり騒がれなくなった。実際、2021年夏以降に新規にTikTokで大きく跳ねて中高生に読まれたタイトルはおそらくあまりない。少なくとも今年の学校読書調査では、昨年のように女子に明らかに影響が見られる、といった傾向は確認できない。

ただ、あれだけ昨年TikTok売れの代名詞として語られた筒井康隆の『残像に口紅を』が2021年調査ではかすりもしなかったのに、2022年調査では高3男子に入っており、影響の即時性がウリのはずのTikTok発の話題らしからぬ動きをしていた点がむしろ興味深いことになっている。

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