2022.11.25

【独占インタビュー】スティーブン・ピンカーが語った「マルクス主義とアナーキズムの何が間違っているのか」

『21世紀の啓蒙』『暴力の人類史』などの著作で知られ、さきごろ新著『人はどこまで合理的か』が刊行されたハーバード大学心理学教授スティーブン・ピンカー博士に、批評家ベンジャミン・クリッツァー氏が行ったインタビューを3回シリーズでお届けする。第2回は、再び注目を集めるアナーキズムやマルクス主義について聞いた。

以下、記事中のグレーの囲み部分は、クリッツァー氏による補遺です。

アイデアの「起源」と「価値」の関係

——『暴力の人類史』や『21世紀の啓蒙』では、世界を改善するうえで啓蒙思想や民主主義が果たした役割が強調されていました。しかし、「ヨーロッパ起源である啓蒙思想や民主主義が世の中を良くしてきたと主張するのは、西洋中心主義的な発想だ」と批判する人も多くいます。このような批判には、どう答えられますか?

ピンカー まず、「アイデアの起源がどこにあるか」ということは、そのアイデアが真であるか偽であるか、そのアイデアが役に立つかそうでないかということとは全く関係がありません。ピタゴラスの定理は西洋に由来しますが、それでもピタゴラスの定理は真実です。どんなアイデアも、どこかには由来しているのです。

 

また、啓蒙思想の理念は西洋的なものである、ということも事実ではありません。西洋では、啓蒙思想は否定され続けてきました。啓蒙思想を否定したファシズムや共産主義などの政治運動も、実に西洋的なものだといえます。

要するに、アイデアの起源とアイデアの価値は無関係だということです。起源と価値を結びつけるのはよくある間違いであり、「発生論の誤謬」と呼ばれます。啓蒙思想が西洋起源だとしても、啓蒙思想は良いアイデアであるかもしれないし、西洋以外の場所にも適用できるのかもしれないのです。

『人はどこまで合理的か』のなかでは、「発生論の誤謬」の例として、過去にタバコ会社が「タバコの煙に発ガン性がある」という事実を発見したのはナチスの科学者であることを利用して喫煙とガンの関連性を否定していた、という事例が取り上げられている。

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