一時、会員数が減少したNetflixだが、7~9月期の新番組で新たな視聴者を獲得して加入数を盛り返したという。世界的にヒットしているドラマシリーズの『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の新エピソード配信が開始されたこともあったが、それ以外に、自閉症を持つ弁護士の奮闘を描いた韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の世界的大ヒットが大きく影響したという。
大御所俳優や名監督でなければヒットしないという時代を超えて、今新しいフェーズに入ってきた韓国ドラマについて、韓国大衆はどんな風に感じているのか。韓国人のさまざま情報をリサーチして伝える、韓国人Youtuberのジンさんに解説してもらった。
以下より、ジンさんのお話です。
取材・文/上田恵子
俳優人気で視聴率が上がるわけではない
よく「韓国で『この人が映画に出ていたら絶対に観に行く』という俳優さんは誰ですか?」聞かれますが、これに答えるのはすごく難しいです。たとえば2年前の韓国本土の統計だと、人気のある映画俳優の1位はアン・ソンギ、次点がソン・ガンホ、順にハン・ソッキュ、パク・チュンフン、ソル・ギョングという感じでした。
かなりシブめのラインナップですよね。みなおじさんで、イケメンというよりは演技派系の人ばかりです。でも今はもう、〇〇が出るから観に行くという時代ではないんですね。人気俳優が出ていてもつまらない作品はあるし、その逆もありますから。
また別の調査で、「大衆への影響力を持つパワーランキング」に入っていた俳優は、1位がハ・ジョンウ、次がファン・ジョンミン、ソン・ガンホ、リュ・スンリョン、ユ・ヘジン、イ・ジョンジェの順でした。

最初のランキングは大御所感が強いですが、こちらのランキングのほうが、ヒット作に出ている俳優が多いように感じます。
監督の中で、「この人が撮った映画なら面白いだろう」という期待値が大きいのが『殺人の追憶』『スノーピアサー』『パラサイト 半地下の家族』を撮ったポン・ジュノです。あとは『JSA』『オールドボーイ』『お嬢さん』で知られるパク・チャヌクですね。また、『チェイサー』『哀しき獣』『哭声/コクソン』を撮ったナ・ホンジンも、映画好きからの信頼が厚い監督です。
でもこちらも同じく難しいのが、いい監督が撮ったからといって必ずしもヒットするとは限らない点です。たとえばチェ・ドンフン監督は、映画『タチャ イカサマ師』『10人の泥棒たち』を大ヒットさせた人。韓国の犯罪映画の頂点にいる人なんですが、彼が撮ったSFアクション映画『宇宙+人』は大コケしました。
ドラマの制作会社も同様で、たとえば最近だと『愛の不時着』を作った「Studio Dragon(スタジオドラゴン)」が有名ですが、よほどのマニアでない限り「この制作会社が作ったドラマだから観よう」とはなりません。誰が出ているか、誰が・どこが作ったかではなく、大事なのは中身ですし、これは公開されて蓋を開けてみるまで傑作か駄作かはわからないということだと思います。
例えば、今年Netflix で公開になった『私たちのブルース』ですが、イ・ビョンホン、チャ・スンウォン、ハン・ジミン、シン・ミナ……と出演者がみな大御所という超豪華なキャスティングでした。視聴率は最終的には2桁超えでしたが、「豪華だし、いい話だけど描き方がちょっと古い」といった声も韓国では多かったようです。そうかと思えば、大御所なし前評判なしでもヒットするものもあります。こういった動きはエンタメが成長してきた証ともいえるのかもしれません。