2022.11.26

【独占インタビュー】スティーブン・ピンカーが語った「進歩・傷つきやすさ・合理性」について

『21世紀の啓蒙』『暴力の人類史』などの著作で知られ、さきごろ新著『人はどこまで合理的か』が刊行されたハーバード大学心理学教授スティーブン・ピンカー博士に、批評家ベンジャミン・クリッツァー氏が行ったインタビューを3回シリーズでお届けする。3回シリーズの最終回は、キャンセルカルチャーと進歩の関係や、合理性や民主主義に日本人が取りがちな否定的態度などについて聞いた。

以下、記事中のグレーの囲み部分は、クリッツァー氏による補遺です。
 

世界は悪くなっている?

——最近では「キャンセルカルチャーやWokeのせいで世の中はどんどん悪くなっている」と言っている人も増えています。しかし、ピンカーさんは『暴力の人類史』や『21世紀の啓蒙』のなかで「世界の状態はこれまでに改善され続けており、現在も進歩は続いている」と強く主張されています。

キャンセルカルチャーの風潮と「世界の状態は改善し続けている」というピンカーさんの持論は矛盾しているのでしょうか、それとも一致しているのでしょうか?

ピンカー まず、これは様々な場面で繰り返し言っているのですが、データによって「人類の状況は改善している」と示しても、「すべての時代ですべての人にとってすべてのことが良くなっている」と主張することにはなりません。前者と後者は異なる主張です。

したがって、あなたの質問は私の主張を誤解しています。『21世紀の啓蒙』のなかでは貧困の減少や余暇の増加など多くの問題が改善しているという事実を指摘しましたが、それに対してひとつの問題を取り上げて「この問題については昔よりも後退しているぞ、このことはどう説明するんだ?」と言っても、私の主張に対する反論にはならないのです。そのような議論は、「進歩」の性質を誤解しています。「すべての物事が常に良くなる」というのは、進歩ではなく奇跡です。

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