それでも習近平の中国が「5年以内に台湾侵攻を行う」と畏れるべき理由

徹底討論 中国のジレンマ・その1

中国共産党は「損得」でものを考えない

宮家 仮定の話として、ズバリ、5年以内に中国の台湾侵攻があると思いますか。

近藤 台湾本島への侵攻ということはないと思います。特に本格的な上陸侵攻は不可能です。ただし、本島以外の島、例えば南沙諸島の太平島、東沙諸島などならあるかも知れません。

宮家 離島の占領など、それをやって、中国共産党政権にとって、どれだけの政治的な意味があるのか、疑問もあります。台湾の政権が「一つの中国」から離れる可能性がある場合、これを阻止し、台湾統一という共産党政権の至上命題を達成するためには、台湾本島を占領する必要があります。離島だけでは、目的を達成できません。

宮家邦彦氏
 

近藤 いや、決して政治的な意味がないとは思いません。私は2012年4月に北京に住んでいました。そのとき、中国は、台風のどさくさにまぎれ、フィリピンからパラセル諸島の岩礁(黄岩島)を奪いました。これに中国国民が熱狂しました。私自身にとっては初めて、ある国が「領土を取り返した」のに立ち会うという体験でした。日本の場合、1972年の沖縄返還がありましたけれど、武力で奪還に立ち会ったのは初めてでした。

これほどまでに国民が熱狂するものなのかと感じました。たとえ台湾の小さな島であっても、奪うだけで、ものすごい熱狂を中国国内に巻き起こすことになります。それだけでも政治的な効果は高いです。

近藤大介氏
 

宮家 それには強力な反論があります。それは「戦略のパラドックス」とよばれるものです。どういう理由があるにせよ、仮に小さな島を獲ろうとした場合、獲ることは出来ます。確かに国内は熱狂するかも知れません。

だけどその後に何が起きるか。中国は力によって現状変更した、しかも台湾が実効支配している島を奪ったと国際社会に認識されます。そうすると、国際法違反であるかどうかは別にして、国際社会の中で孤立を深めることは間違いありません。間違いなく制裁がかかってきます。台湾独立阻止という目標が達成できるわけでもないのに、コストは成果とは比較にならないほど大きくなります。そうなったら、中国にとって、ロシアのクリミア併合以上の戦略的失敗となるのではないのでしょうか。

近藤 客観的に見れば仰る通りですが、中国共産党というのは、そういう発想をしません。習近平主席や人民解放軍は 全くもって毛沢東的発想をしている人たちだから、合理的な損得で物事を量りません。第一、そんな発想をしていたら、ゼロコロナ政策など行うはずがありません。

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