2022.11.22

なぜ田中角栄は田原総一朗にあそこまでキレたのか?田原の告白

コミュニケーションは正直が9割(前)

「違うだろ!」

田原総一朗氏というと、相手が与党のコワモテ政治家であろうが、泣く子も黙る中核派議長であろうが、舌鋒鋭くズバズバ斬りこむ論客として知られる。

「朝まで生テレビ!」の激論を毎月見る限り、田原氏のコミュニケーションは「物怖じ」とはおよそ縁遠いように思える。その田原氏が、実は生来の口下手であり、雑談が得意ではないというから意外だ。口下手であるはずの田原氏が、なぜ誰とでも本音でトコトン激論できるようになったのか。近著『コミュニケーションは正直が9割』でその秘密が明かされる。

今から40年以上前、田原氏は伝説の政治家・田中角栄から取材の場でキレられたことがあるそうだ。

〈午前11時、場所は目白の田中邸。しかし、30分経っても1時間経っても始まりません。そこで、秘書の早坂茂三さんに、なんで始まらないんだと聞きました。

すると、田中さんはいま私に関する資料を、必死で読んでいるというんですね。

なんでも昨日、私の著書などを一貫目集めさせたといいます。一貫といえば4kgぐらいです。それだけの資料というのは相当な量です。

それで、ようやく田中さんが出てきてインタビューが始まりました。

すっかり私のことが頭に入っていますから、田中さんはこちらの質問に的確に答えてくれます。

そうこうしていると、私の質問に突然、「違うだろ。そんなことには興味ないだろ」と言うのですね。

Photo by Shinya NishizakiPhoto by Shinya Nishizaki

私という人間と、その仕事をすでに理解している田中さんは、私の建前の質問を見抜いて、お前が本当に聞きたいことを、本音で話せと言ってくれたわけです。

この人には、建前が一切通用しないんだとわかりました。

酸いも甘いもかみ分けて、人情の機微を知り尽くしている人間通の大政治家に、小手先のテクニックなど通用しません。人間対人間、裸になって本音で向き合わなければいけない……。

同時に、相手のことをどれだけしっかり調べているか。どれだけ知っているかで勝負が決まるということがよくわかりました。

田中さんは本来、インタビューされる側です。それが必死になって私の資料を読み込んで、取材に臨んでいるわけです。これには参りました。

 

お互いが認め合い、本音でぶつかるには、まず徹底的に相手のことを知るということ。相手が驚くぐらい、相手のことを知っていることが、コミュニケーションの大前提であることを教わりました。
(略)
この田中さんとのインタビューが、私のジャーナリストとしての型を決めたと言っても過言ではありません。

その後、取材やインタビューの際は、相手のことを調べられるだけ調べ、しっかりと準備していく。それをもとに、本音で相手に飛び込んでいく。それが私の基本スタイルになりました。〉(『コミュニケーションは正直が9割』35〜40ページ)

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