すべての「点」で起こった!?
ビッグバンは、一種の爆発のようなものとして描かれることが多い――たった1つの点から突然、光と物質が火の玉状に膨張しはじめ、怒濤(どとう)のように宇宙全体へと広がった、というイメージだ。
だが、じつはそうではない。ビッグバンは宇宙の中で起こった爆発ではなく、宇宙の爆発だ。また、「たった1つの点」で起こったのではなく、すべての点で起こった。
現在の宇宙の中に存在するすべての点――遠方の銀河の端に存在する1つの点、逆方向の同じくらい遠方の銀河間空間の一部分、そして、あなたが生まれた部屋――これらのすべての点は、その一つひとつが、時間が始まった瞬間には、触れ合うほど接近していたが、まさにこの最初の瞬間に、急速に互いに遠ざかりはじめた。
ビッグバンの理屈はいたって単純だ。
宇宙はたしかに膨張している――銀河と銀河のあいだの距離が徐々に大きくなっているのが観察される――ということは、銀河間の距離は過去においては短かったわけである。

「高密度だった宇宙」を求めて
思考実験として、今日起こっている膨張を巻き戻して、百数十億年の時間を遡(さかのぼ)ってみると、銀河間の距離がゼロだったはずの瞬間にいたる。
現在の私たちが観察できるすべてのものを含んだ観察可能な宇宙は、はるかに小さく高密度で、高温の空間に閉じ込められていたはずだ。
しかし、観察可能な宇宙は、広大な宇宙のうち、私たちがいま見ることのできるほんの一部でしかない。宇宙がそれよりもはるかに広がっていることはわかっている。実際、現在の私たちの知識に基づいていえば、宇宙の大きさは無限である可能性があり、おそらくそうであるらしいのだ。
だとすると、宇宙は最初から無限大だったのだ。ただ、もっと高密度だったのである。
これを頭の中で描くのは容易ではない。無限大にはそういう難しさがある。
無限大の宇宙があるとはどういう意味だろう?
無限大の宇宙が膨張しているとはどういう意味だろう?
無限大の宇宙が、いかにしていっそう無限大になるというのか?
残念だが、これに関しては私がみなさんの理解を助けることはできない。無限大の宇宙を有限の脳の中に収容する簡単な方法は、まったく存在しない。
私にいえるのは、数学と物理学には無限大を扱う理に適(かな)った方法がいくつか存在し、それは何も壊したりしないということだ。