2022.12.03
宇宙の「終末」に起きる巨大な破壊……「ビッグリップ」とはどんな現象か? その驚愕の実態
「ダークエネルギー」をご存じでしょうか?
物理学の専門家のあいだでも、いまだその正体を見出せていない謎めいたこのエネルギーには、宇宙全体をズタズタに引き裂く危険性がひそんでいるといいます。
分子をちぎり、原子を解体し、やがて原子核そのものを崩壊させる「ビッグリップ」とはいったい何か? そのとき宇宙の運命は?
壮大で不可思議な宇宙の姿と、来るべきその終末を全5回に渡ってご紹介する短期連載第4回!
※本稿は、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(ケイティ・マック著・吉田三知世訳)を一部再編集の上、紹介しています。
宇宙に織り込まれたエネルギー
宇宙の中で最も重要と言ってほぼ間違いないであろう宇宙論的現象にしては、ダークエネルギーを研究するのは驚くほど難しい。
いま知られているかぎりでは、それは宇宙のどこにでも存在し、完全に均一で、宇宙そのものに織り込まれており、それが唯一発揮する効果は、宇宙をごくわずかずつ膨張させることだけで、遠く離れた銀河と銀河のあいだの広大な空間よりも小さな尺度では、検出可能な影響は一切及ぼさない。

ダークマターを研究する物理学者は、研究対象の扱いにそれほど苦労しない──ダークエネルギーと同じく見えないけれども、ダークマターは、これまでに私たちが観測したほぼすべての銀河または銀河団の周囲に集まっていることが知られており、重力場を支配し、光を湾曲させ、最初の瞬間から宇宙の歴史の流れを左右している。
一方のダークエネルギーは……、ただひたすら膨張するのみだ。