ダークエネルギーによる劇的な終焉
だからといって、ダークエネルギーの研究が完全に閉ざされているわけではない。ダークエネルギーを解明する糸口が、主として2つ存在する。宇宙の膨張の歴史と、銀河および銀河団の成長過程だ。
両者を調べるために、私たちは遠方の「かつての宇宙」を観測し、宇宙の進化を時間を追ってたどろうとしている。しかし、いかにして観測するにせよ、微弱な信号と統計学を使って、小さな効果を探り出そうと努力するほかないのである。
このようなたぐいの研究は、困難であると同時に、取り組むだけの価値がある。というのも、ダークエネルギーは宇宙で最も優勢な成分であると同時に、私たちの現時点での理解を超えた「新しい物理学」が存在するという確かな証拠だからである。
そのことと、ダークエネルギーの正体が何であると判明するかによっては、想像したよりもずっと早く、ダークエネルギーが不可避的に、宇宙を激しく破壊してしまう可能性も生じうる。いかにもふさわしく、「ビッグリップ」と名付けられた、ダークエネルギーによる突然の劇的な終焉がありうる。

宇宙定数の果たす役割
ダークエネルギーは、宇宙を膨張させる宇宙定数だと見なされることが多い。おのずと膨張していく傾向を宇宙に与え、宇宙の膨張を加速させているのだ、と。巨視的な尺度においては、これは良い説明だ。
しかし、銀河や恒星系の内部、あるいは、一般に組織化された物質のごく近傍においては、宇宙定数はなんの影響も及ぼさない。
宇宙定数はむしろ、「孤立化させる力」と考えたほうが正しいだろう──2つの銀河が、すでに遠く離れているなら、それらをいっそう遠く離れさせ、個々の銀河や銀河群、あるいは銀河団を、時が経過するにつれていっそう孤立させるのが宇宙定数の仕事だ。