ドラマチックな宇宙の終焉「ビッグバウンス」……そのとき宇宙に起きる「これだけのこと」
ビッグバンに始まり、一定の進化のプロセスを経て、ふたたびビッグバンに戻る――いわばリサイクルされる宇宙像を提示する「サイクリック宇宙論」は、永劫回帰する未来を夢見ることができるという点で魅力的です。
繰り返される「創造と破壊」のはざまでは、いったい何が起きているのか? そして、その解明のカギを握る重要な「場」とは?
壮大で不可思議な宇宙の姿と、来るべきその終末を全5回に渡ってご紹介する短期連載最終回!
※本稿は、『宇宙の終わりに何が起こるのか』(ケイティ・マック著・吉田三知世訳)を一部再編集の上、紹介しています。
無限にリサイクルし続ける宇宙
「宇宙はビッグバンからビッグクランチにいたり、ふたたびビッグバンに戻る」というプロセスを永遠に繰り返すと考えるサイクリック宇宙論は、すっきりしているという点では魅力的だ。
「無」から始まり、潰滅的な最期に終わる宇宙に比べ、サイクリック宇宙は原理上、時間の中を順方向にも逆方向にも、果てしなく「バウンス」を繰り返し、一切のムダなく無限にリサイクルを続けることができる。
もちろん、宇宙のすべてがそうであるように、これもじつははるかに複雑だったとやがてわかるかもしれない。

繰り返される創造と破壊
エキピロティック宇宙モデルの「エキピロティック」という言葉は、「大火」を意味するギリシア語に由来し、「宇宙の誕生も最終的な死も火に包まれている」という、このシナリオの特徴を反映している。
エキピロティック宇宙モデルの最初期形では、初期宇宙が高温状態になったのは、隣り合う2つの三次元ブレーンが華々しく衝突した結果だとする。この2つのブレーンの一方が、のちに私たちの宇宙全体になるものを含んでいたと主張するのだ。
衝突後、2つのブレーンはふたたび離れて別々の方向へ進み、膨張しながら、バルクの中をゆっくりと遠ざかっていく。だが、両者はまた戻ってくる。エキピロティック宇宙モデルは、宇宙の創造と破壊が何度も繰り返されるサイクリックな宇宙論なのだ。