いたるところで起こるビッグバン!
サイクリック宇宙を理解するために、拍手するとき両手を勢いよく「パン!」と打ち合わせることを想像してみてほしい。打ち鳴らされた両手が離れ、ある一定の距離を置いて、また打ち合わせるために戻ってくる。これが繰り返されるという考え方だ。
ブレーンワールド宇宙モデルの場合、これは2つのブレーンが接近しつつある時期に相当する。
インフレーション理論の場合と同じく、エキピロティック宇宙モデルも、今日私たちが宇宙で観測している物質の分布と矛盾しないかもしれないし、また、私たちの宇宙がきわめて均一で平坦(湾曲して元のところに戻ってくるとか、なんらかの大規模で複雑な幾何学的構造をもっているなどということがない)に見えるのはなぜか、ということについて説明してくれる可能性もある。
すべてが妙に均一だという事実は、2つのブレーンが、衝突して跳ね返る前に巨大で平行だったなら辻褄が合う――つまり、もしそうであったなら、この説でいう衝突時のビッグバンはいたるところで同時に、同様に起こると考えられるのだ。
この途方もない均一性の中に、わずかな量子ゆらぎがときどき生じて、のちに成長して銀河や銀河団や宇宙の構造のすべてになる高密度領域が、小さな突起のようにあちこちにできることになる。

最大の問題
しかし、インフレーション理論と同様、バウンス理論に関しても、多くの理論上の細部について、現時点ではまだ、詰めの作業が続いているところだ。最大の問題は、バウンス期のあいだに何が起こるかである。
真の特異点が生じるのだろうか? それとも、究極の最大密度に達することなしにバウンスが起こって、なんらかの種類の情報がこの事象を超えて存続し、次のサイクルに受け継がれることが可能になるのだろうか?
バウンス理論の最新バージョンでは、収縮がほとんどなく、特異点のようなことは何も起こらない。このモデルでは、ブレーンどうしの衝突は収縮に関与せず、収縮を起こすのは「スカラー場」である。