じつに魅力的な可能性
スカラー場は、情報がサイクルからサイクルへと引き継がれるという、じつに魅力的な可能性を提示しており、しかも理屈の上では、その証拠を私たちがいつの日か観測できるかもしれない。
詳細は複雑だが、ほんとうに循環しているのは、宇宙の中身の混合物と、観測者がその進化をいかに知覚するかである、というのが基本的な考え方だ。収縮とバウンスを引き起こしているのはブレーンの衝突ではなく、宇宙を満たすスカラー場である。
この新しいサイクリック宇宙モデルが私たちの宇宙を記述するのなら、いつか遠い未来の時代には、遠方の銀河たちが遠ざかるのをやめて、ゆっくり方向を転換し、こちらへ戻ってくるのが見えるようになるだろう。
私たちが「ちょっと心配しないといけないかな」と思いはじめるころ、スカラー場が突然、否応なしにそのエネルギーを放射に変換し、新たなビッグバンで始まる次の宇宙の周期を開始すると、私たちは前触れもなく、突然、華々しく消滅する。

ビッグバンは一度きりの出来事なのだろうか!? それが1つの激しい転換点に過ぎないとすると、ビッグバウンスによって現宇宙が消滅した後、私たちが遠い未来に新しい宇宙でまた生命を宿す可能性もあるのかもしれない。
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