2022.11.27
# 行政・自治体 # 企業・経営

「浜松のドン」スズキ相談役・鈴木修が裏で糸引く、大型野球場計画の「大矛盾」

津波「危険地域」でウミガメの産卵地
小林 一哉, 週刊現代 プロフィール

鈴木修の「野望」とは

川勝知事は「防災機能を持ち、災害時の津波避難施設となる3万人収容の大型野球場を県と市で建設、民間運営の公設民営方式で整備する」などと表明、2020年の遠州浜海岸防潮堤完成に合わせて整備する方針を示した。

 

県は2016年5月、野球場を核とする「遠州灘海浜公園」基本構想を策定、野球場建設に150億円から180億円、公園全体で210億円から250億円を見込んだ。当然、「防災・スポーツエリア」と位置づけされた。

その直後に、鈴木市長が「新球場完成後に現在の市営球場を廃止、隣接する市営陸上競技場を第1種陸上競技場に整備する」構想を発表。「第1種陸上競技場」は、サブトラックを有して、世界大会などを開催できる規模の施設を指す。市長の構想発表によって市民たちは、県の新野球場建設が、日本有数の陸上部を有するスズキへ「利益誘導」になっているのではないかと疑うようになった。

JR東海道線高塚駅からスズキ本社をのぞむ。南海トラフ地震をにらんでスズキはいち早く本社工場機能の一部を浜松市北部に移転した(浜松市、筆者撮影)

つまり、市営球場の跡地にサブトラックをつくり、地元浜松で国際陸上大会を開催したい鈴木修氏の野望を実現させる目的だったのだ。ケチで有名なスズキが5億円も寄付した理由がこれでハッキリとした。

ただ、“ダブル鈴木”の思惑通りには計画は進まなかった。多くの市民が津波危険地域への懸念だけでなく、遠州浜一帯は風や砂ぼこりが強く、野球には向かないなどと建設地変更を川勝知事に求めた。11のアマチュア野球団体でつくる県野球協議会は、市営浜松球場の存続とともに、1万人規模の幅広い世代が野球を楽しめる施設を要望した。

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