FTX破綻、民主党への疑惑の眼差しと米国の暗号資産規制のゆるい網

人脈、献金、ウクライナ支援金還流……
安田 佐和子 プロフィール

希代の詐欺師だったのか

バイデン氏は3月、初めて暗号資産に関する米大統領令に署名していた。ファクトシートに基づけば、その柱は以下の5つである。

1) 消費者や投資家、ビジネスの保護
2)米国と世界の金融安定の保護、並びにシステミック・リスクの低減
3)安全で手頃な金融サービスへの公平なアクセス促進
4)技術の進歩への支援、並びにデジタル資産の責任ある開発と利用を確保
5)米国版、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の可能性模索

米大統領令を受け、米金融規制当局などで構成される金融安定監視評議会(FSOC)は10月3日に公表した“デジタル資産と金融安定、及び規制に関する報告書”にて、暗号資産の急激な価格変動や暗号資産発行事業者による違法な取引を挙げ、金融安定にリスクをもたらすと警鐘を鳴らしていた。それから、約1カ月後にFTXが破綻したことになる。

FTXの破綻劇は、わずか1週間程度しか掛からなかった。

11月2日に暗号資産情報サイトのコインデスクが、FTXの関連会社でトレーディングを行うアラメダ・リサーチのバランス・シート146億ドルのうち、約58億ドルがFTT(FTXが発行するトークン)と報道、両社への財務不安を急速に高めた。11月7日には、暗号資産取引所バイナンスCEOが保有する全てのFTT売却を発表した結果、急落。11月11日 取り付け騒動を経て、FTXがチャプター11を申請、今年1月には評価額が320億ドルに膨れ上がったにも関わらず、2019年の創業からわずか3年で破綻を余儀なくされた。

さらに同日にはFTXのウォレットか少なくとも10億ドルに及ぶ顧客資金が消失、内部犯行説まで流れた。

FTXには、米運用会社ブラックロックを始めタイガー・グローバル、カナダのオンタリオ州教職員年金基金、シンガポールの政府系投資会社テマセク、さらに日本のソフトバンクなど約160社が投資していたとされる。既にオンタリオ州教職員年金基金は9500万ドル(約130億円)の損失を計上、テマセクは2億7500ドル(約の減損処理を発表した。個人を含めた債権者は100万人を数えるといい、負債額は最大500億ドル(約7兆円)と囁かれる。

 

一体、FTXに何が起こったのか。

破綻したFTXの新たなCEOに就任したジョン・J・レイ氏が裁判所に提出した書類では、資金流用及び不適切な会計処理が横行し「完全な企業統治不全」に陥っていたという。

FTXとアラメダ・リサーチの関係と、その乱脈経営は以下のチャートの通り。顧客資金と注文情報により暴利を貪った挙句、貪欲が講じ巨額損失を被った以外に、前CEOであるSBF氏を始め社員の住宅購入に融資するなど、想像を絶する。

弱冠27歳でFTXを立ち上げたSBF氏は、トヨタ・カローラに乗り、Tシャツと短パン、ラフな服装で素朴な善人の印象を与えながら、その実態は強欲に満ちた稀代の詐欺師だったと言えなくもない。

■FTXの共同創業者サム・バンクマン-フリード(SBF)氏とは

■FTXの破綻、暗号資産版のITバブル崩壊かリーマン・ショックか、あるいは……

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