米国が路線変更した?
米国のウクライナ支援は「和平交渉路線」に変わったのではないか。そんな見方が欧米で浮上している。ジョー・バイデン政権は打ち消しに躍起だが、そう見られてもやむをえない背景もある。事実なら、ウクライナにとっては「バイデンの裏切り」になりかねない。
発端は、マーク・ミリー米統合参謀本部議長の発言だった。
ミリー氏は11月9日、ニューヨークで開かれた経済クラブで講演し「交渉の機会があり、平和が達成できるときは、そのチャンスをつかむべきだ。ウクライナとロシアのどちらも、軍事的勝利は不可能であることを認識しなければならない」と語った。
ミリー氏は翌10日、CNBCテレビのインタビューでも「ウクライナはロシアを膠着状態に追い込んだ。だが、将来どうなるかは分からない。いま外交的解決の可能性がある」と語った。16日の記者会見では「ウクライナ軍は成功に次ぐ成功を続けている。こちらに力があって、相手が弱いときに交渉したいだろう。私は可能性がある、と思う」と繰り返した。

米軍制服組のトップであるミリー氏が、戦況見通しを語るだけならともかく、和平交渉の必要性にまで踏み込むのは、異例である。外交を担うのは、国務省でありホワイトハウスだ。良く言って「勇み足」、一歩間違えれば「越権行為」と批判されてもおかしくない。
ところが、ミリー氏が3度にわたって発言しても、なんのお咎めもなかった。バイデン政権は「ミリー発言を黙認、もしかしたら容認しているのではないか」という見方が出るのは、当然だ。あえて「ミリー氏の発言を観測気球として使っている」とも言えるからだ。
ミリー発言の後、11月10日配信のニューヨーク・タイムズは「ミリー氏は政権内でも同じ趣旨の発言をしていた」と伝えたうえで「バイデン大統領やジェイク・サリバン大統領補佐官は、和平交渉論に同調していない」と報じた。
11日配信のCNNは、アントニー・ブリンケン国務長官も同じくミリー氏に距離を置き「ブリンケン、サリバン両氏は、いまがウクライナに圧力をかけるタイミングとはみていない」と報じている。
