苦境に陥ったロシア軍、「頼みの綱」の作戦も不発に終わるか…ロシア・ウクライナ戦争の今後
本年2月のロシア・ウクライナ戦争開始以降、ロシア軍の侵攻は失敗が続き、ロシア軍は苦境に陥っている。ロシア軍の弾薬の一部はすでに底をついているとの指摘があり、9月にはウクライナ軍が大規模な反撃に成功した。そして11月にウクライナはヘルソン市周辺の奪回に成功した。こうした状況において懸念されているのは、ロシアによる「冬の認知戦」である。

ロシア軍の2度の侵攻失敗
2022年2月24日、ロシア軍はウクライナの北部、東部、南部の3方向から同時に侵攻を開始した。これに併せて、ロシア軍はウクライナの主要都市に対して、精密誘導ミサイルなどによる攻撃を行った。しかし、ウクライナ軍の強い抵抗により、ロシア軍の侵攻は失敗し、3月下旬にウクライナ北部から撤退した。
ロシア軍の精密誘導ミサイルなどのハイテク兵器は、その多くが侵攻の初期段階に撃ち尽くされたと言われている。ロシアは戦前、世界第2位の武器輸出大国であったが、ハイテク兵器製造のための半導体を自前で作る能力はない。そして、ウクライナ侵攻後、経済制裁により半導体の輸入が断たれた。このため、ロシアは冷蔵庫や食器洗い機用の半導体を兵器に転用せざるを得ないという、苦しい状況に陥っている 。
こうした状況を受け、5月以降、ロシア軍は作戦を大きく修正し、ウクライナ東部に戦力を集中した。ここで活躍したのは、榴弾砲という従来型の兵器である。榴弾砲は大砲の一種であり、19世紀末から陸軍の主力兵器となり、第1次、第2次世界大戦などの20世紀の戦争において最も活躍した兵器の一つである。一般的な有効射程は20~30km程度と比較的短いが、その威力は極めて大きく、21世紀の現代においても陸上部隊の主力兵器である。
5月以降、ロシア軍は、強力な威力を持つ榴弾砲をウクライナ東部の狭い範囲に集中し、大量の弾薬をウクライナ軍に対して射撃した 。5月から6月の戦闘においてロシア軍が射撃した砲弾の数は、1日あたり約50,000発 、あるいは70,000発 とも言われている。ウクライナ軍が射撃した砲弾は、その約10分の1でしかなく、ロシア軍はウクライナ軍を圧倒した 。そしてウクライナ軍には1日あたり数百人の死傷者が発生し 、ウクライナは東部の自国領土を徐々に失っていった。