11月26日に公開される『ワタシの中の彼女』は、コロナ禍を生きる女性たちの姿を映し出した4本の短編からなるオムニバス映画だ。監督の中村真夕氏は、今年3月に公開された『親密な他人』でオレオレ詐欺事件を題材に中年女性の抑圧されたアイデンティティやセクシュアリティを映し出していたが、本作においても“女性の孤独”というテーマが通底している。

全4話を通して、ひとりの女優・菜葉菜(なはな)が40代の専業主婦、30代の女性会社員、20代の風俗嬢、40代の目の不自由な女性を演じ分けているのは、誰もが彼女たちのようになり得ることを示唆しているようだ。
とりわけ、第3話「ゴーストさん」は2020年11月に渋谷区・幡ヶ谷のバス停で殺害された大林三佐子さんの事件「渋谷ホームレス殺人事件」がモチーフになっており、コロナ禍が女性の貧困や孤独を加速したことを浮き彫りにする。

女性の孤独に光を照らし続ける中村監督が、いまの日本社会に抱く危機感とは?

中村真夕監督/(C) tokyo.hitori

コロナ禍で感じた「彼女は私だ」という思い

――なぜコロナ禍の女性の孤独をテーマに作品を作られたのでしょう?

中村監督:2020年の3月、第一回目の緊急事態宣言のときに私たちは家から出られなくてみんなモヤモヤしていましたよね。コロナは私が生きてきたなかで前代未聞の世界的な災害です。全世界の人々が孤独を共有したことなんていまだかつてありませんでした。だから、人と人との繋がりについて改めて考えたかったんです。特に、社会的に弱い女性をコロナは直撃して、女性は男性とは違う孤独を体験していると思うんです。

第2話「ワタシを見ている誰か」/『ワタシの中の彼女』より
 

――第1話の夢をあきらめたことを後悔している専業主婦、第2話の摂食障害に苦しむ女性会社員、第3話のホームレス女性と交流する風俗嬢、第4話のオレオレ詐欺に遭う目の見えない女性――ひとりの女優を通してさまざまな女性の人生を見せるというアプローチにより、どの人生も他人事とは思えない気持ちになりました。

中村監督:そういう意味もあって『ワタシの中の彼女』という映画のタイトルにしました。特に、第3話「ゴーストさん」は2020年冬に幡ヶ谷のバス停で寝泊まりするホームレスの女性、大林三佐子さんが突然殺されてしまった事件をもとにしています。あの事件が起こった翌月、派遣社員たちを含めた約200人ほどが「殺害されたホームレス女性を追悼し、暴力と排除に抗議するデモ」を起こし、「彼女は私だ」というプラカードを掲げて渋谷駅周辺を行進しましたよね。私自身もフリーランスなのでいつ職を失うかもしれない。「何か起こったら私も彼女になっていたかもしれない」という思いでいっぱいでした。

第3話「ゴーストさん」/『ワタシの中の彼女』より