毎月10万を「前妻の子」のため払った58歳主婦ケアラーが「自身を守る」のに必要だったこと
ヤングケアラー(若者介護者)の存在が、クローズアップされるようなった昨今。その火付け役となったのが、『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』の著者で、自身もヤングケアラーとしての経験を持つ、奥村シンゴさんだ。
そんな奥村さんが今回、取り上げるのは、重い障がいを抱えた「前妻の子」の生活費を成人するまで払い続けたある女性のケース。彼女がそのような負担を背負うことになったのには、個人的な借金を補填したい姑の卑劣な思惑があったーー。
彼女に起きたような不幸を生まないために、知っておきたいこととは。
介護転職後の年収、男性が214.7万円、女性が175万円と大幅ダウン
ヨシミさん(仮名=以下同)のように30代からケアを続けている「ミドル(ロスジェネ)ケアラー」は総務省の「平成29年就業構造基本調査」によれば、30~39歳で33万人、40歳~49歳は89万5200人います。
特に40代のケアラーが5年前の77万5800人に比べ11万9400人も増加しています。18歳未満の「ヤングケアラー」推定10万人、18歳以上~30代の「若者ケアラー」21万100人合わせて31万100人の約3倍の多さ。

ヨシミさんは、身体介助ではなく精神的・経済的に支援を続けたタイプのケアラーです。
筆者の場合、著書『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』に記載しましたが、32歳から認知症の祖母と精神疾患の母親を計10年間1人で介護しました。
母親は、以前から祖母とうまが合わずケンカを繰り返し、10年間で脳梗塞・大腸ガン・精神疾患を罹患し体も強くありません。弟と妹は、共に家庭をもっているのと、祖母への思いが筆者ほどではなく一緒に手をつないで介護するわけにいきませんでした。
加えて、祖母や母親は税金や債権者からの債務を長期間滞納し毎月綱渡りの生活……。
それでも、筆者は祖母に昔から可愛がってもらい祖母も筆者と一緒に家で過ごしたくて恩返しする気持ちでケアを開始。一方で、「介護を続けると正社員の再就職や結婚が難しくなり、貯蓄額や老後に大きく支障が生じるかもしれないが母親や祖母が気になる」と今後の人生の不安、焦り、葛藤が続いています。
ヨシミさんや筆者世代のケアラーは、介護後のライフステージのリセットが困難というデータがあります。明治安田生活福祉研究所とダイヤ高齢社会研究財団の「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査結果」によれば、介護転職者の年収の変化は、男性が214.7万円、女性が175万円と大幅に減少しています。
「姑のような好き勝手な高齢者に介護費用をかけるなら、今のケアラーさんの介護手当に回してほしい。そうすれば、介護離職して困窮せず仕事もできると考えています」(ヨシミさん)