死の危険は、織り込み済み。武人としてその現実を潔く受け入れ、名を惜しみ、決して卑怯な振る舞いはしない。真珠湾攻撃を前にした搭乗員たちにそうした精神講話が連日行われていたことが北原收三さんの日記からも読み取れるが、それを受け入れる素地として、アメリカに対する敵愾心というのも多分にあったことも同時にうかがえる。
彼らは真珠湾攻撃の歴史的意義、つまり、日本はアジア進出をもくろむアメリカの横暴を前に我慢を重ねてきたが、ついにやむなく立ち上がるのだ、これは正義の戦争なのだ、という作られた「物語」もくりかえし聞かされていた。