「夫婦になる」という重さと責任

婚姻届けを提出した後、夫婦になったお祝いにと、当時、白山にあった豆腐料理の専門店に立ち寄って乾杯をしました。ところが、ほんの数分前まで「ふたりでゴーゴー」といった高揚感だったのに、急に真逆のドーンと重たい空気が私たちにのしかかってきました。

これから、お互いを夫婦として一生過ごしていく、責任と葛藤……。何よりもう後戻りはできないということを豊も私も同時に感じたのか、約2時間、お互いに一言も口にせず、酌だけを交わしていました。

黙っている間に、いろんなことを考えました。決断するまでには時間があったとはいえ、まだ22歳と20歳の夫婦。しかも、彼は若者のカリスマと呼ばれ人気絶頂だったこともあり、身内以外には友だちにも口外できない内緒の結婚でした。彼の所属事務所にさえ伝えていなかったので、結婚式や友達に祝福される場面もありませんでした。さらに執行猶予中の身なので、ふたりだけの新居を堂々と構えることもできなかったし、彼の仕事も不安定で暗礁に乗り上げているような状態が続いていました。

 

入籍した夜は、豊と同じ事務所に所属していたハウンド・ドッグの大友康平さんの結婚披露パーティがありました。事務所から何度も豊の実家に電話があり、出席してほしいと大友さんからも言われていました。

でも、本当は自分も誰よりも祝われたいのに、祝福されるどころか、結婚したことを誰にも伝えられず……。そんなことを考え、どうしようか悩んでいる豊に私は「家にいるよりシャンパンでも飲みたいな」と言ったら、「うん、行こうか。自分たちが結婚した日に、人の結婚式に出るのも俺たちらしいかもな」と笑って、会場の日清パワーステーションにふたりで向かいました。

そこには、内田裕也さん、アン・ルイスさん、玉置浩二さんほか、錚々たるロックスターが来られていて、輝くばかりの美しい花嫁さんがたくさんの方から祝福されていました。あまりの美しさに「きれい…」と私がつぶやくと、豊は「ウエディングドレスを着せてあげられなくてごめん」と言ってくれて。私が「いつか着せてね」と伝えると、ギュッと私の肩を抱き寄せながら、「うん、絶対に約束するよ」と耳元で囁いてくれました。