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聖地を撮り続ける写真家が伊勢神宮で見た「手つかずの森」と水の豊かさ
2022.12.01

写真家が見たSDGs

聖地を撮り続ける写真家が伊勢神宮で見た「手つかずの森」と水の豊かさ

聖地を撮り続ける写真家が伊勢神宮で見た「手つかずの森」と水の豊かさ 撮影/稲田美織 画像ギャラリーを見る→

「聖地」を辞書で引くと以下のような文言が並ぶ。

1)聖人・教祖などに関係ある神聖な土地。
2)山・川・森などの自然のうちで,特に神聖と信じられている地域。
3)俗に,発祥の地やシンボルとなるところ。また,書籍・映画・アニメなどの舞台となった場所や,著名人にゆかりのある場所。

世界中の1と2の「聖地」を撮り続けている写真家が、稲田美織さんだ。
きっかけは2001年9月11日に起きた同時多発テロ。1991年からNYに暮らしていたが、現在は日本に拠点をうつし、国内外の聖地を撮り続けているいる。

時には雪山を登り、川を下り、世界各地の聖地を回りながら、自然の力を感じてきた稲田さん。そこには、人間が浅はかな気持ちで壊してはならない大切なものが確実に存在する。
地球の素晴らしさを見つめなおすためにも、稲田さんが出会った様々な「聖地」を写真と共に紹介していく連載第2回。第1回では伊勢神宮との出会いについて執筆いただいたが、伊勢神宮で見たものについて具体的に執筆いただく。

直接触れられる御手洗場の水

前回、伊勢神宮でずっと昔から続いていた本物のSDG’sに出会ったことにより、17年間住んでいたNYから日本に戻ってきたことを書いた。今回は伊勢神宮で見たことを具体的にお伝えしたいと思う。

伊勢に行ったことのある方は分かると思うが、内宮(ないくう)は3つの山に抱かれるように存在している。五十鈴川の水源である、神路山、島路山、前山とそれらは高い山ではないが、その存在により伊勢神宮は守られている。内宮では手水舎もある。その先にはなんと、いにしえのままに五十鈴川で直接手を洗える場があり、そこには森の香りがあふれていて、自然のエネルギーに直接触れることができる。一般的な神社では手水舎にてひしゃくで手と口をすすぐので、伊勢神宮でそのダイナミックな御手洗場(みたらし)を見た時、本当にびっくりした。川の中をよく見ると小さな魚たちが気持ちよさそうに泳いでいた。川上から山から湧いた水がこんこんと流れ、そこにいるだけで心身ともに浄化されていることを実感する。

五十鈴川の源流を撮影するために山に登った時、何ヵ所か水が沸いている泉に出会った。山に雨が降り、山の内部に長い時間蓄えられていた水が、数年後に山から湧き出ていたのだ。

撮影/稲田美織

そのためには手つかずの天然の森が重要な役割を果たす。つまり山は緑のダムになっているということだ。ヒノキや杉などの植樹だけの森では、そうはいかないのだそうだ。五十鈴川の源流の両岸60メートルは、水を守るために一切人間の手を入れない。神宮の森は神々を祀る厳かな聖地のため、2000年以上前から人の手がほとんど入っていない場所が多く、暖温帯林(亜熱帯と冷温帯の間に位置する森林)の特徴を残す貴重な森林だ。シイ、カシ、タブノキ、クスノキなど、常緑広葉樹や葉の表面がつやつやしている照葉樹林も多い。最初この森を見た時に、なぜか力強い太古の森を想像した。この森に植生する植物の種類は実に豊富で、学術的にも大変貴重な森なのだという。

撮影/稲田美織
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