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気候変動が進むと「洪水」が増える…専門家に聞く、これから必要な「適応策」
2022.12.02

環境省×NHKエンタープライズ×FRaU #4

気候変動が進むと「洪水」が増える…専門家に聞く、これから必要な「適応策」

1.5℃と2℃はまったく違う

堅達 南極の氷の溶け方についてはどういったことがわかってきているんでしょうか。

平林 過去に比べ南極の氷が不安定になっているという観測が出てきたので、ティッピングポイント的な現象も評価報告書に採り入れられました。北半球の海の氷は暖かくなると溶けるんですけれど、例えば2℃上がったものを2℃下げると、同じような経路、同じような時間スケールでまた氷が増えていく。一方で、南半球の陸の氷が溶け出すと、同じようには戻らないと言われています。万が一、南極の陸の氷が溶け出す現象が起こってしまうと、非常に大きな海面上昇、永久凍土の喪失による生態系からの炭素排出リスクなどが予測されます。

Photo by iStock

堅達 1.5℃を超えたときには不可逆的なゾーンに入るリスクがあるという。

平林 はい、1回上がっても下がればいいということではなくて、超えてしまうということに非常に大きな懸念があるのです。

堅達 その1.5℃は地球のガードレール、人類の防衛ラインにしておかないといけないということですね。オーバーシュートのリスクについて、具体的に水の分野ではどういったことが書かれているのでしょうか。

平林 洪水のような被害が、もはやオーバーシュートに限らず、ある程度低い温暖化レベルでも必ず出てしまう場所があると明記されています。ですので温暖化レベルを低くするだけではなくて、そういった被害に対しての適応策についても考える必要があります。

堅達 特に島しょ国ですね、小さな島国にとっては、これは本当に取り返しのつかないことになりうるということですね。

平林 あとは食料に関して言いますと、日本はたくさん食料を輸入しているということもありますので、他の国の悪影響を日本も被るという可能性もあります。

堅達 1.5℃と2℃なんてたいして違わないと受け止めている方も多いと思うんですけれども、大きく違うものでしょうか。

平林 そうですね、大変大きく違うのが生態系への影響です。温暖化のスピードに合わせて生息域を移動できない動植物は絶滅する可能性があります。また1.5℃というのは全球平均気温、海の温度の上がり幅も含めてなので、陸の温度はその何倍にも高く上がります。東京で1.5℃上がるのと同じことではありませんので注意が必要です。

堅達 洪水に関して言うと1.5℃と2℃の違い、どのくらい気をつけなければいけないのでしょうか。

平林 強い雨、豪雨が生じる可能性が0.5℃でも明確に違うという証拠が出ています。特に海洋上の水蒸気が増えることで日本であれば九州の北西部で非常に雨が増える。台風がより北部に行く可能性があるので、北海道まで台風が到達して強い雨をもたらすということも可能性として考えられます。

Photo by iStock

堅達 今まで比較的台風の直撃が少なかったであろう東日本の東北地方や北海道あたりでも、これから洪水や台風に備えていかなければいけないということでしょうか。

平林 そうですね。国土交通省が温暖化も踏まえた対策を今、考えているんですけれども、日本一律ではなくて、九州の北西部ないし北海道に関しては、少し他の地域よりも大きく見積もった予測を出しています。

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