――そこがアメリカとの大きな差ですね。

浅田 そもそもSAG-AFTRAには、労働時間や食事の時間、休日、賃金などについてさまざまなルールが細かく取り決められていて、インティマシー・シーンに関するルールはあくまでその中の一つ。それらがすべて遵守されるようにハリウッド作品は作られているんですね。

こうした明文化されたルールが一つもない日本で、インティマシー・シーンのルールだけ守ってください、というのは正直難しいところがあります。もちろん私が入る以上は、少なくともインティマシー・シーンについてはきちんとやりますよ、とお約束しますが。

 

――今おっしゃった労働問題を含め、海外の状況を見てきた立場から、日本のエンタメ業界の課題はどこにあると思いますか?

浅田 邦画ならではの良さというのは確実にあって、素晴らしい作品もたくさんあるのですが、やはり長時間労働で休みがないせいで現場の皆さんがすごく疲弊されていて、気持ちに余裕がないのを感じます

佐野 そこは年々大変になっていってるよな、と思いますね。

浅田 今、韓国が抜きん出て素晴らしい作品を作っているのは、政府が介入して映像業界の労働環境が変わったおかげもあって。韓国にしてもハリウッドにしても、そのルールが100%いいものだとは思いませんが、日本は単純にルール作り自体がものすごく遅れている。そこを改善しない限り、このままだと若手も育たないですし、せっかく今ある邦画の良さやクリエイティビティもこれ以上伸びていかない厳しい状況になってきていると思います。