偏差値35から東大へ、リアル『ドラゴン桜』西岡壱誠…教師の間で伝説になった、衝撃の「落ちこぼれ」エピソード
シリーズ累計40万部を突破した『東大思考』の著者である西岡壱誠さんは、大ベストセラー入りした今でこそ注目を浴びるようになったが、じつは、学生時代の偏差値は35の落ちこぼれだった。
赤点どころか進学もままならない成績、スポーツも不得意で、クラスメイトからは「いじっていい奴」のレッテルを貼られ弄ばれる日々。いつしか「これが自分の人生」と夢も希望も諦めていた。
そんな西岡氏が、かつての担任教師の渋谷先生にすすめられ、一発逆転を図った東大受験。当初は無謀なチャレンジと半信半疑のまま始めたが、徐々に自分に革変の意識が芽生えていく。
「不思議なもので、最初の方は勉強していても、何にもリアリティがなかったんですよね。でも勉強して行くうちに、それがどれくらい高い壁なのかが理解できるようになっていった。
はじめは、壁の高さすらわかっていなかった。それが、「ああ、こんなに高い壁を越えようとしているのか」と見えてくるようになったわけですね。
そして、そのために勉強していくうちに、その壁が本当は、もっともっと高い壁だとわかるようになって行く。いつまで経っても、壁との距離が縮まらない。そんな閉塞感の中で、それでも、どうすればこの壁を超えられるのか、必死で考える日々でしたね」
起死回生、一発逆転の東大合格をかち取るまでの「リアル・ドラゴン桜」を、ほぼリアルに近い小説『それでも僕は東大に合格したかった』から辿る。
師匠の正体は、中学3年のころに担任になった渋谷氏だ。自由な空気をまとい教師らしからぬ発言をする師匠に、いい意味で裏切られた気持ちになった西岡さんだった。
「先生」に見えない担任の先生
中学3年生の始業式。
聞き慣れない先生の名前が呼ばれ、A組のクラス担任が新任の先生になったことを知った。

名前だけでは、教える科目も性別も年齢も全くわからず、「いったいどんな先生なんだろう?」と期待半分、怖さ半分で戻った教室で、年齢不詳の男性がクラスで本を読んでいるのを目撃し、度肝を抜かれた。
(何だこの人!?)
第一印象は、クラス全員そんな感じだったと思う。驚いたのは、別にその人の容姿が優れていたからでも、何食わぬ顔で本を読んでいたからでもない。
(この人が、先生?)
黒髪でスーツも着ているし、ネクタイもしているし、3年A組の新しいクラスにいるということはこの人は、新任の先生なのだろう。しかし、誰がどう見ても、「先生」には見えない。雰囲気が、あまりにも自由過ぎるのだ。他の先生にあるような「しっかりさ」「真面目さ」が一切ない。
だらっとした座り方、気怠げに本を見る目線、少し乱暴に見える本のページのめくり方、その人の挙措は、何から何まで、「先生らしい」という形容とは正反対だったのだ。
(先生なのか、この人は?)
『GTO』の鬼塚の方がまだ先生らしいとすら思える。誰も彼もが大人しく座り始めた。その異質な人物の存在感に押されて静まり返る中、「あ、クラスみんな揃った?」不意に、その人物は声を出した。