大相撲九州場所、“優勝決定巴戦”で起きた「脳震盪」問題を軽く考えるべきではない理由
巴戦に見た大きな課題
大相撲九州場所は、西前頭9枚目の阿炎(あび)の優勝で幕を下ろした。
1994年の3月場所以来となる巴戦(阿炎、高安、貴景勝)が行われたことや、ここまで不振が続いていた大関の中で貴景勝が巴戦まで残れたこと、新型コロナウイルス対応ガイドラインに違反して3場所出場停止処分を受けた阿炎が復帰後に一皮剥けて最高の結果を残せたことなどを考えると非常に良い場所だったと、個人的には感じている。
3場所連続の平幕優勝や御嶽海と正代の大関陥落、そして満身創痍の照ノ富士が膝を手術するという異常事態の最中ではあったが、幕内では怪我による途中休場も無く、良い部分も多い場所と言っていいと思う。

ただし、千秋楽に一つ、大きな課題が見えた。高安のことだ。
東前頭筆頭で今場所を迎えた高安は、3月場所と9月場所に千秋楽まで優勝を争う中で、勝負の大一番を若隆景と玉鷲を相手に落とし、何としてでも初優勝が欲しい状況だった。
千秋楽まで2敗を保ち、3敗の阿炎と貴景勝をリードする展開だったが、阿炎との直接対決に敗れ、巴戦に持ち込まれ、そこで再び阿炎に敗れてしまったのである。
腰痛の影響で大関を陥落し、そこからは苦労が続いたが、ようやくコンディションを戻した2022年。32歳のベテランで、もう何度も無いチャンスだったことから、今回優勝を逃してしまったことは本当に痛い。
しかし私がここで指摘したいのは、高安が悲願の優勝に届かなかったということではない。巴戦の取組中のことである。