2022.11.30
# 大相撲

大相撲九州場所、“優勝決定巴戦”で起きた「脳震盪」問題を軽く考えるべきではない理由

西尾 克洋 プロフィール

現行制度に穴はないのだろうか

大相撲では昨年も、痛ましい事故が起こっていた。

当時三段目の響龍が取組中に頭から土俵に倒れ、そのまま動かなくなり、その後死亡するという事故が発生した。なお、倒れてからから5分以上医療措置が取られなかったことが判明しており、脳震盪の対応については問題意識を高く持っていたはずだ。

そんな中、優勝決定巴戦の最中に脳震盪が疑われる事態が発生。これは明確に警鐘が鳴らされていると捉えて良いだろう。

Gettyimages

少なくとも今回の巴戦においては、対応らしい対応が見られなかった。現状では脳震盪に関しては「取り直しの一番に出場させない」という規定だけが設けられているが、巴戦での対応については未着手だった。

果たして制度の穴は巴戦だけなのだろうか?

いや、他にも取組が継続するケースは想定できる。例えば、水入りの最中に脳震盪の症状が出ていたらどうなるのだろうか? 廻し待ったの時はどうなるのか?

 

少し考えただけでも別のケースが次々と出てくる。しかし、いずれにしても、まず大事なのは、脳震盪が疑われる力士を止めることである。

おそらくこれは、もっと柔軟に、臨機応変に考えるべき課題だろう。単に想定される状況ごとに条文を追加していくだけでは、足りないはずだ。なぜなら、力士の脳震盪の危険性を理解しながらも、今回、高安を誰も止められなかったのだから。

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