塾での競争がモチベーションアップ
受験の取材をしていると、塾も家庭学習も、英検も……と熱心に勉強させる家庭は珍しくない。その子に合っていれば、スポーツの試合に出るのと同じ感覚で、楽しめるだろう。でも中には、許容量を超えているのでは、と見受けられる子もいる。小学校の報告書が必要な学校もあるから、学校生活も大事だ。近年、中学受験塾の膨大な勉強量や週末ごとのテストといった仕組みに関して、「課金が激しい」「親のエゴ」という声もあり、付き合い方は難しい。それでもレモンさんは、受験塾を肯定しているという。
「最近になって、娘の受験を振り返ってみました。親が『お医者さんになるなら、桜蔭に行ったほうがいいよ』と勧めたのが勉強の動機になったのではなく、実際に娘自身のモチベーションがあったんです。サピックスの小テストで間違えないこと、友達に負けないこと。そして偏差値や自分の点数が、塾でははっきりわかるので、『勝ちたい』という思いがあったそうです。
何より、サピックスの授業内で、ハイレベルな子たちと厳しい闘いをしたのが、良かったようです。今は、塾の友達とも仲良く遊んでいますよ。塾なしで中学受験をした保護者の話を聞くと、そういう競争がないのはある意味、修行なのではないかと思い、私自身は塾アリ派で、塾があったほうが良いのではないかと思っています」
大学受験に、新たな塾通い
開成中に並ぶ男子最高峰である、筑波大付属駒場生の保護者に取材した際、驚くエピソードを聞いた。合格発表の日に学校の門の外で、東大を目指す受験塾「鉄緑会」が「おめでとう、次は東大だ」と掲げ、待ち構えているという話だった。
レモンさんも、2月2日に桜蔭の合格発表を見に行った時、合格した友達のお父さんがその場で鉄緑会に電話して、入塾の申し込みをしているのを見た。一晩、悩みに悩んだが、レモンさんも「やはり必要だ」と思い、中学入学前の春休みから新たな塾通いをスタートした。
「大学受験にも、塾は必要だと思っています。桜蔭は授業がハイレベルですが、大学受験の対策とは違うので……。新御三家と言われる女子校・男子校では、もっと大学受験対策がされているようです。御三家を意識して、頑張ろうという雰囲気なのでしょうね」

こうして、絵に描いたような中学受験の成功を果たしたレモン家。しかし、弟の中学受験では大きな波乱があったという。後編「姉は「桜蔭・浦明・豊島岡全勝合格」弟の中学受験、波乱に親はどう寄り添うか」では弟さんの中学受験について具体的に伺っていく。