和室が敬遠されるのはしかし、畳がマットレスと同様の問題を抱えているからでもある。今、畳を定期的に取り外して干す人はあまりいないのではないか。昭和半ば頃までは、季節の行事として年に2回程度畳を干していた。

今は、賃貸の場合、数年で引っ越す人が多いので、入居者の交替の際に畳を取り替えることが一般的だ。住まいを所有する人は、自分たちでタイミングを決めて畳を取り替えることもあるだろうが、その手続きも面倒と思われるのかもしれない。

フローリングの床は拭いてお手入れできるが、畳の床を拭く人は少なそうだ。しかし、畳はすき間にゴミが入り込みやすいし、飲み物などをこぼしたらシミになりやすい。日に焼けて変色しやすくもある。手入れのしにくさも和室が敬遠される理由の一つだろう。

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また、家具を置くと畳が凹んでしまうことも気になる。キャスター付きの椅子などを引いたら傷んでしまう。高度経済成長期に洋風のライフスタイルが広がり、嫁入り道具として家具をそろえることが豊かさの象徴とされたこともあって、室内に置く家具の種類が多くなった。家具と和室の相性の悪さも、和室が敬遠されるようになった理由の一つだろう。

近年は洋服ダンスは備え付けのクローゼットに、整理ダンスはプラスチック製のボックスへと、家具も減る傾向にあるのだが、ベッドを布団へ、とはあまりならないようだ。もしかすると、椅子式生活が定着し、床に直接寝たり座ったりする生活スタイルが消えつつあるのかもしれない。

湿気が多い日本では、気楽なこともあり靴を脱ぐ生活スタイルは残りそうだが、他の暮らし方は洋風化が相当進んだ。もしかすると、和室との付き合い方自体が、忘れられつつあるのかもしれない。