2022.12.02

【独自】ドバイで現地警察に拘束された! 仮想通貨で30歳日本人男性が落ちた地獄

後篇
現代ビジネス編集部

「窃盗(スティール)の嫌疑だ」

今年に入り、インターネット上にS氏による仮想通貨詐欺被害を訴えるホームページを見つけた。不信感は一気に増大し、「僕も騙されていたんじゃないか」と強く疑うようになった。

とにかくS氏の元から離れようと決意し、そのためにも購入したブルガリの居住用物件を売却するしかないと考えた。円安も進行し、1億5千万円で買った物件は3億円ほどで売却できる公算が高かった。そこからせめて自分が紹介した出資者への約3千万円を返せればという一心だったという。

ところが、いったん帰国していた日本から物件売却のために8月下旬にドバイ国際空港についた時だ。イミグレーションを通過するため自動読み取り機にドバイで取得した自らの住民IDカードをかざすと、赤いランプがついた。

 

すぐに空港スタッフが駆けつけ、「ちょっとこっちに」と誘導された。一旦案内されたのは空港内の警察詰所。突然シルバーの手錠をかけられ、護送車で空港近くの警察署に連行された。

何も言われぬまま、アフリカ系や中国系などさまざまな国籍の人々が所狭しと収容されている留置施設にぶち込まれた。1枚の小さなマットレスに3人が眠るような状況で、漂う体臭や排便などの悪臭でうまく睡眠も取れず、自分の身に何が起きたのか全くわからずに混乱した。

「窃盗(スティール)の嫌疑だ」

ようやくそう告げられたのは翌日のことだ。

間もなくS氏の代理人と名乗るアラブ人男性が現れ、面会することになり、「あなたは210万ディルハム(当時のレートで約8500万円)をS氏から盗んだ」と説明を受けた。聞けば、S氏が伊藤さんを窃盗容疑で警察に告発したという。

8500万円の内訳はこれまで伊藤さんに「貸し付けていた」という日本とドバイの渡航費用、語学学校費用、ホテル居住費用、ブルガリ物件の肩代わり分、FX投資の貸付金などだという。伊藤さんが理解できるものも理解できないものもあり、それらを足し合わせた額だった。

トラベルバン(渡航禁止)を命じられ、ドバイの格安ホステルのドミトリー部屋に長期滞在を余儀なくされている伊藤聡志さん(写真は本人提供)

一旦は釈放され、ドバイの日本総領事館に相談して紹介された弁護士にも相談し、英語での供述調書を作成するなどして対策を練った。しかし、1ヵ月後に再び警察署に呼ばれて向かうと、そこに現れたのがS氏本人と代理人だった。

「これにサインしないと刑務所行きだよ」

そう言って提示されたのが示談書だった。S氏は伊藤さんに対し、日本に帰ってかき集められる額を尋ねてきた。心理的に追い詰められ、「1500万円なら」と答えると、その旨がその場で書類に書き込まれ、サインを求められた。

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