「事件のその後」三島バイク交通死亡事故 加害者のウソを警察が鵜呑みに…遺族が慟哭「夫を亡くしても、私は被害者になれなかった」

高木 瑞穂 プロフィール

交通ルールは必ず守る

その日、夫婦の娘・杏梨(当時26歳)が、3ヶ月前に生まれた2人目の孫を連れ三島の実家に戻っていた。勝美は孫に会えるのを心待ちにする一方で、がんに侵され闘病中である長男の勇梨(同24歳)を何より気にかけていた。杏梨の里帰りはほかでもない、これから家族全員で勇梨の見舞いに行くためだった。

萩の交差点。ここを横切ればもう、自宅は目と鼻の先。信号は青になったが、勝美はすぐに走り出そうとはせず、一息入れてからアクセルを踏む。信号が変わるギリギリで突っ込んでくる車も珍しくないからだ。

ヒイ、フウ、ミイ......信号は、青に変わってからすでに7秒が経っていた。信号無視の車さえ来なければ、つまりはWとさえ出くわさなければ、何事もなく自宅に着いていたことだろう。

 

決して寄り道などしないし、交通ルールは必ず守る。飲酒運転などもってのほかだ。運転に関しては堅物を体現したような男である。いつもは帰りの連絡から決まって15分もすれば家に着いていた。勝美の幸せは、家族揃って食卓を囲む時間に代わるものはない。

知枝が胸騒ぎを覚えたのは、時計の短針と長針が6の数字に重なったときである。

LINEが届いてから30分近く経過していました。そのとき、家の前を救急車がけたたましいサイレンの音を鳴らして何台も通っていったので、もしかして主人が事故に遭ったかもしれないと。それで、慌てて主人の帰宅ルートをたどって行ったら、交差点で警察官が車を停めていたんですよね。警察官に、事故ですか? と確認してから、主人が帰ってこないんですけどって聞いたところ、バイクを確認してくださいって言われて。......主人のバイクでした

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