「事件のその後」三島バイク交通死亡事故 裁判でウソがバレた加害者に執行猶予付き判決…遺族が悲痛な告白「被害者に救いはない」

ノンフィクションライター・高木瑞穂氏とフリー映像作家・我妻憲一郎氏主幹のYouTubeチャンネル『日影のこえ』は、「重大事件のその後」を追い続け、事件の関係者たちの「名もなき声」を記録に残している。彼らが上梓した『日影のこえ メディアが伝えない重大事件のもう一つの真実』(鉄人社)のなかから、前編記事『「事件のその後」三島バイク交通死亡事故 加害者のウソを警察が鵜呑みに…遺族が慟哭「夫を亡くしても、私は被害者になれなかった」』に引き続き、2019年1月に発生した「三島バイク交通死亡事故」を紹介する。なお、文中で使用される「僕」は高木氏と『日影のこえ』取材班の総称である。亡くなった仲澤勝美さん(当時50歳)が交通ルールを守らず、事故を引き起こしたという加害者・Wの証言とそれを鵜呑みにする警察。勝美さんの家族は目撃者探しに奔走する。

「不快です」「死ね」

これまで「警察が真実を隠蔽するわけがない」と信じ込んでいた家族も、防犯カメラすら確認しない手抜き捜査に愕然とし、翌日からSNSはもちろん、現場で手作りのビラを配るなど目撃者探しを開始する。が、寄せられた反応は願っていたものではなかった。杏梨は言う。

父が右折をしようとしたと報道されてしまったので、自分の父親の過失で事故が起きたのに、いちゃもんをつけているように見られました。事故直後の新聞に住所も出たので、嫌がらせのような手紙が入ってたり、SNSでも『相手のご家族の方から聞きましたけど、あなたたちが言っていることのほうが事実じゃないですよ、不快です』とか。中には『死ね』なんてメッセージもありました

事件後、SNSを通じて被害者遺族に送られてきた心ないメッセージ
 

家族は見ず知らずの社会から向けられる悪意にさらされたために、杏梨の確信は揺らぐ。

もしかしたら父は、その日に限っていつもと違う帰宅ルートを使い、右折に失敗してしまったのかなとか、急いでいて信号無視をしてしまったのかなって

心ないメッセージが続き「目撃者を探すことをやめて、そっと父の冥福を祈り生きていこう」という考えが彼女や家族の頭をよぎりはじめた頃、よく脇道で勝美と一緒に信号待ちをしていたという1人の女子大生から連絡が入った。彼女は帰宅を急いでいたある日、国道の信号が黄色になるタイミングでスクーターを発進させようとしたとき、

危ないよ、停まって。ここは危ないところだからもう少し一緒に待とうよ」と勝美から声をかけられていた。

だから、絶対に信号無視なんてするはずないですよ

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