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「畑に炭を入れる農業を当たり前に」温室効果ガス削減をめざす農場の取り組み
2022.12.05

環境負荷を抑えた農業をどう実現していくか

「畑に炭を入れる農業を当たり前に」温室効果ガス削減をめざす農場の取り組み

人や自然、あらゆる資源の
地域内循環について考える

夏場に人気の枝豆を始め、丹上さんのほか2~3人で手入れをし、多品目の野菜を育てている。

〈結び合い農園〉が目指すのは、地域に密着した持続可能な農業だ。丹上徹さんがパートナーと2人で、ここに小さな農場を構えたのは、2012年のこと。少量多品目を作る季節の野菜は、無農薬・無化学肥料で生産され、地元の飲食店や給食用に卸すほか、地域のいくつかの拠点で対面販売している。地元に密着した有機による農業のなかで、近年特に力を入れるのが、温室効果ガスの削減だ。

1年ほど乾かした竹を炭く設備。写真の開放式の炭化器や、同様の形状の穴のなかで炭焼する。

「2年ほど前に、パリ協定などを話題にしたラジオ番組を聴くまでは、温室効果ガスよりも原発などの問題に関心を持っていました。番組で、世界がカーボンバジェット(気温上昇を抑えるための温室効果ガスの累積排出量)の上限に、着実に向かっていることを知った。このままだとどう考えても超えてはいけないラインを超えるという事実が衝撃的でした」

個人では太刀打ちできない、大きすぎる問題に直面して、当初は途方に暮れたという。

竹を炭く設備は、穴の形など、熱伝導率を高めるために試行錯誤を重ねている。

「気候危機の問題って、本当は自分ごとなのに、みんな他人ごとのように考えていると思うんですよね。この先の絶望的な状況にすごく落ち込んでいたところに、それに対して行動を起こすことで気持ちが前向きになるという情報を得て、とりあえず、できることをやってみようと思ったのが始まりです」

野菜を卸しているレストランから廃油を集め、かすを濾してストックしておく。溜まったら、業者に頼んでバイオディーゼル燃料にしてもらう。

そして、石油ストーブを薪ストーブに、電力を再生可能エネルギー100%のものに、風呂の給湯を太陽熱温水器にするなど、身近な家のことから変えていったという。

「でも、個人の生活にまつわることだけでは、焼け石に水だなと。だったら、温室効果ガスをたくさん出している農業という産業にも、同じように取り組んでみようと考えました」

竹を燃やしている様子。周囲の竹を原料にすることで、竹林や里山の保全、農地を荒らすイノシシ対策にもつながる。

そしていま、丹上さんが畑で最も力を入れているのが、周囲で山ほど手に入る竹を利用した温室効果ガスの削減だ。野放図に広がる竹林や里山を整備して集めた竹を乾かし、炭焼きにしてバイオ炭を作る。炭焼きの際に無酸素状態にすればCO2は排出されず、植物が光合成で吸収したCO2を、炭に閉じ込めることができる。それを農地に散布して、地中に炭素を戻してやることで、作物の生育にも良い影響を与えるのだ。丹上さんの畑では、このバイオ炭を2ヘクタールの敷地内の畑、すべてに撒いている。竹を大量に集めたり、炭焼きしたりする作業は地域でつながった仲間たちとイベント化し、地域の人々にも取り組みを広めている。

竹を燃やして、できあがった炭。空気に触れる部分はCO2が発生してしまうが、表面以外は無酸素状態になり、炭窯を使うよりも短い時間で多くの炭が作れる。

「自分の農業生産で出るCO2くらいは、自分の畑で吸収できればなと。いまバイオ炭を使った畑で栽培した野菜は、『クルベジ』として販売することができるのですが、そのうちそんなブランドがなくなるくらい、日本で畑に炭を入れることを当たり前にしたい。そうなれば相当なCO2の吸収源になる。木や竹の資源が豊富にある日本は、バイオ炭に向いている国なんです。いまは無駄な手間に見えるかもしれませんが、そのうち誰でもやりたくなるような状態にして、浸透させたいですね」

農地1000㎡あたり年間140kgの炭を入れた畑で栽培され、CO2減少に貢献した野菜は「クルベジ」と呼ばれる。将来的には、消費者がクルベジでないと買わないくらいバイオ炭を広めたいと、丹上さんは言う。

竹を焼いて作ったバイオ炭。これを草堆肥に振りかけて、農園のすべての畑に散布している。
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