炭を畑に撒くことのメリットは、温室効果ガスの削減だけに留まらない。炭に空いた無数の孔は微生物の住処となり、土壌の生物相を豊かにして、作物の生育を助ける。また、細かい孔に成分が付着して流れ出るのを防ぐので、少ない堆肥や肥料で野菜を育てられる。
増えすぎた竹によって荒廃した里山や竹林を整え、かつ豊かな農作地を育てる、多くの利点があるバイオ炭。これが世界中の農園に広まれば、2050年までにCO2の排出量を0・8ギガトン削減できる可能性があるとも言われている。数少ない有効な手段のひとつなのだ。

バイオ炭のほかにも、取り組みは様々だ。化学肥料を使わない代わりに、地元で刈った草を使った堆肥を使用する。また、冬場のビニールハウスでは、苗を育てるための電熱線を使わず、木のチップの発酵熱を活用している。寒い季節に人気の焼き芋や茹でタケノコも、使うのは薪ストーブの火。野菜販売用のトラックやトラクターの燃料は、近隣の店に野菜を納品する際に回収した廃油を、業者に頼んでバイオディーゼルにしてもらう。また年内には、ソーラーシェアリングを始める準備も整った。

「ごく一部ですが、畑を覆うビニールシートを使用していたり、堆肥の原料として集めてきた草にプラスチックが混じっていたり、完璧でない部分もたくさんあります。そんな堆肥を使うなんてという人もいますが、散々プラスチックに依存した暮らしをしてきた我々の心配より、次世代のための安心安全を考えなければならない。そのために、今後のリスクを考えて、自分の野菜に関しては、プラスチックに依存しない包装に替えています。その方がプラスチック資材にお金を払うよりいいし、地元にも環元できると思うので」

葉野菜は米袋を開いた紙で包み、その他は新聞紙を折って作った袋に入れる。これらのリユース資源を使った包装は、地元の社会福祉法人や障害者施設などで折ってもらい、その分のお金を支払っている。徹底して、地域資源が循環する農業の仕組みを考えている。