「えっ、要介護1と2は自己責任なの?」

多少の誤解はあれ、そんな驚愕の言葉がSNSで広がり、Twitterのトレンドに「介護1と2の保険はずし」という言葉が躍ったのは、2022年9月終わりのことだった。

9月26日より、厚労省による介護保険制度の見直しに向けた議論が、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会で始まった。冒頭のように誤解されがちだった「要介護1と2」が国の管轄から地方へ移管という案は、反対が多かったせいか、見送りになる予定と11月末に報道されている。「俎上にあがった”要介護1と2”は、『軽度症』として扱われていますが、認知症の場合は、”軽度”と分類されることに違和感があります」そう語るのは、『お父さんは認知症 父と娘の事件簿』の著者、田中亜紀子さん。それはどういうことなのか。田中さんの父が介護1だった時におこした事件を振り返りながら、認知症の「介護1」のリアルをお知らせする。

 

ピック病とアルツハイマー混合の父

9月26日から始まった議論の審議内容を見た時、正直ぎょっとした。
私は、ライターの仕事をしながら、要介護3の認知症で87歳の父と同居するワンオペ介護の日々を送っている。主治医によれば、父はピック病と、アルツハイマーの混合した状況だそうだ。このピック病とは、前頭側頭型認知症のひとつ。症状としては、穏やかだった人が怒りっぽくなったり、汚い言葉で人をののしったりと、人格が変わってしまうこともある。また、急に感情が変化する情緒障害、異常行動、人の言うことを聞けない、同じ行動を意味なく繰り返す、まれに痴漢や万引きなどの行動を取るなど、一般的な認知症のイメージとは少し違う症状がいろいろある。父はピック病の割合が多いそうで、近記憶以外は比較的保たれている状態だ。

SNSでも「要介護1と2の保険はずし」がトレンド入り…Photo by iStock 

最初に言っておくが、私は介護保険制度には本当に感謝している。それがなかった時代だったら、うちのようなワンオペ介護の人はいったいどうなっていたんだろう。そう考えると、震えてしまうほどで、日々、介護保険制度と介護業界に従事する方々のありがたさを実感している。

そんなお世話になっている制度であり、ワンオペ介護中の身としては、ひどく介護保険の見直しの審議が気になる。費用負担の増大という問題はもちろん深刻であるが、個人的に今回の改正の論点の中で、大変気になっていたのが、要介護1と2が、国の管轄からはずれ、地域の管轄にすることを視野にいれていることだった。地域の管理下になるからといって、悲惨なことになるとは限らないが、予算削減が目的ということは、今よりよくなることはないだろうと、つい思ってしまう。反対が多かったせいか、24年度の改正については見送りの方針だと11月末に報道され、ほっと一息だが、あくまでも見送りであって、いつまた浮上してくるかわからない。