「要介護1と2」は「軽度」なのか
しかも、ひっかかるのは、要介護1と2が、「軽度者」という枠組みで語られており、そこからは、軽いだろうから、大きな枠組みからはずしてもいいだろう、という雰囲気が感じられることだ。介護保険制度に関わる分類では、何も支援を必要としない「自立」をいれると、介護を予防する段階の「要支援」の1と2、「要介護」が1から5までの全8段階がある。そうすると、要介護1と2は、中ぐらいの位置づけである。コロナの軽症も、実質的には軽症ではなかったように、そこは比較の問題の言葉遣いであっても、結果として内容も軽い印象になるのは、いかがなものか。
特に認知症の高齢者の「要介護1」と「要介護2」が軽度者かというと、個人的には首をかしげる。精神的な疾患から問題行動をしてしまうのに、「体は動く」という機能的な面の評価が加わり、「軽度者」に分類されてしまうなら、逆に行動範囲が広い認知症患者はどこで何をするリスクがあるかわからない分、介護する家族の精神的、肉体的負担は半端ない。しかも、別の原稿で執筆するが、介護度を決める「認定調査」の面接では、身体的なことへの質問が多い印象があったり、その面接中に認知症の症状をうまく見せられないこともあり、認知症の度合いがきちんとジャッジされているかは謎だ。というより、認知症で、特養老人ホームに申請が出せる条件である「要介護3」に認定されるのは、かなり難儀なことに思える。

審議会の資料を読んでみると、令和1年12月の意見の中に、このように書かれているくだりもあった。
「見直しは、将来的には検討が必要であるが、総合事業の住民主体のサービスが十分ではなく、地域ごとにばらつきもある中では、効果的・効率的・安定的な取組は期待できない。まずは現行の総合事業における多様なサービスの提供体制の構築等を最優先に検討すべき」
これは本当にそうだと思う。
この審議会資料には認知症の要介護1と2の件にも触れている個所もある。
「介護サービス利用者の負担増となることを懸念。要介護1・2の方は軽度者ではなく、認知症の方もおり、重度化防止のためには専門職の介護が必要。施設に入れない、低所得で高齢者向け住まいに入れないなど様々な理由で生活援助サービスを必要としている方がいることに留意が必要。たとえ総合事業が充実したとしても、要介護認定を受けた人の給付の権利を奪うことは反対」