介護保険制度の見直し審議が行われる中、9月にTwitterのトレンドに入り、世間を騒がせた「要介護1と2の保険外し」。もとい、要介護1と2が国の管轄からはずされることが、24年度の改正には盛り込まれない方針との報道が11月末にあった。見送りになったと報道があった。この俎上にのった要介護1と2は「軽度症」扱いだが、、認知症の「要介護1」は決して軽度ではない。『お父さんは認知症 父と娘の事件簿』の著者、田中亜紀子さんの父が要介護1の時に、起こした事件と日々を例にとる。

「認知症」の状況は、入院の条件にカウントされない
父が、転倒した傷を、動揺しながらも自らなんとかしようとして、おでこの皮膚をかりとり骨にしてしまったのは、じりじりと熱い夏の日のことだった。救急車で病院に運んだものの、「おでこの皮膚がないから縫えない。本人が皮を流しに捨てたっていってるから探してきて」と医師にいわれ、一人で帰宅して台所の腐敗した生ごみの中を必死でかきまわしたぬめっとした感触。持って行ったが、結局使えなかったので、「骨が広範囲にむき出しなので、移植手術ができるかどうかもわからない」と医師に卒倒しそうなことまでいわれたこと。なのに、命に別状はないからと、当日、父はその病院に入院させてもらえないと言われ、途方にくれたことが心に残る。
結局、必死でその日ひきとってくれる病院を探し、かなり高額な料金で一泊ののち、なんとかしばらく入院できる病院を探し、ほっと一息。その後、おでこに血管が周囲からはえてきて、「これなら皮膚移植手術ができるだろう」と、入院先から通った、最初に運ばれた公の病院の外来で言われた。安堵したものの、消毒だけで採算がとれないからかはわからないが、ようやく入院できた病院から、手術まで数週間あるのに退院を迫られる事態に。しかし家に帰ることは現実的ではない。「痛み」さえ感じていないのに、おでこが広範囲が骨になっている認知症患者の父に「じっと寝ていてくれ」といっても無理だろう。そもそも言うことも聞けないし、ストップもきかない。

もし、私が気が付かないときに、ふらふら歩いて転倒でもしたら、脳みそが飛び散る事態になりかねないし、絶対に家には戻せない。かといって、ショートステイもすぐにはとれない。認知症のことは、入院の条件にカウントされないのだ。絶望的な気持ちになった。