「悪い円安」が「新語・流行語大賞」候補の30語にノミネートされたのはこうした「円安・ドル高」に関心が高まっていた時期だった。連日報道される「円安・ドル高」によって「値上げの秋」に見舞われたことによって、普段為替市場にそれほど関心を持っていない一般国民にまで「悪い円安」という認識が広く浸透していったのである。
円安が終わりを迎えつつある
しかし、相場というものは全員に事実情報が行き渡り、全員が同じような方向性を感じた時点で終わるのが常である。
実際に「悪い円安」が「新語・流行語大賞」にノミネートされる直前に150円48銭まで「円安・ドル高」が進んでいたドル円相場も、「新語・流行語大賞」でTOP10入りを果たした12月1日には、136円55銭と13円93銭、割合にして9.26%下落、円高方向に振れている。
「新語・流行語大賞」でTOP10入りするほど世間の注目を集めたことで、専門家が繰り返し唱えていた「日米金利差拡大による円安」は終幕を迎える結果になった。

足もとの金融市場の関心は12月13、14日に開催される米国のFOMCでの利上げ幅と今後どこまで利上げされるのか(ターミナルレート水準)に向けられている。現時点の米国政策金利(FFレート)は4.0%であるのに対してターミナルレートは5%程度だと考えられているので、この先しばらく米国で利上げが続くことは必至の情勢である。米国で利上げが続くという事は「日米金利差拡大」も続くという事である。
しかし、「日米金利差拡大による円安」は終幕を迎えている。
それは拙コラム「FRBがついに「利下げ」へ転換か…この先の金融市場を占う「超重要なヒント」」で指摘したように「インフレ指標が「自然落下局面」に入った」なかで、ターミナルレートの水準とそれに到達する時期の想定が付き始めたからだ。