円安の次は「悪い円高」がやってくる…これから日本経済が払う「大きすぎるツケ」

なぜ日銀はインフレを放置したのか?
近藤 駿介 プロフィール

「円安・ドル高」に対する共通認識が出来上がってきた段階で、「日米金利差拡大」の目途が立ち始めたことで「円安・ドル高」圧力は弱まっている。世の中で「円安・ドル高」の共通認識が浸透したということは、為替市場の参加者である投資家や輸出・輸入業者のほとんどが「円安・ドル高」に対する備えを進めたことでもある。それを象徴する具体的な事例が企業の「想定為替レート」の引上げである。

「上場メーカー106社の2023年3月期下半期の想定レートは、1ドル=135円が最多の28社だった。次いで、1ドル=140円が27社で、1ドル=135円~140円が全体の半数を占めた。106社の平均値は1ドル=135.3円。2023年3月期の期初レートは119.1円だったが、わずか半年で16.2円も上回った」
(東京商工リサーチ11月17日付「上場メーカー「想定為替レート」 平均1ドル=135.3円、期初から16.2円アップ ~ 2023年3月期下半期 「想定為替レート」調査 ~」
東京商工リサーチHPより(https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20221117_01.html)
 

企業の「想定為替レート」とは、輸出入を行う企業が業績の見通しや事業計画を決める際の基準とする為替レートのことである。

為替市場が「想定為替レート」より「円安・ドル高」で推移していれば、輸出業者は「想定為替レート」よりドルを高く売ることが出来るので、得られる「為替差益」が増える一方、輸入企業は「想定為替レート」よりドルを高く買わなければならないので、「為替差損」を被り利益が削られることになる。

「想定為替レート」が引き上げられた?

3月FRBが利上げに行ったことで為替市場は「ドル高・円安」に転じ始めていたが、それでも年度初めの4月のドル円相場は1ドル122円64銭程度であった。

「想定為替レート」を119円台に設定していた輸出企業にとっては、その後の円安進行によっていつドルを円に換えても「為替差益」を得られる状況が強まっていった。反対に輸入企業にとって、円安進行で時間の経過とともに「為替差損」が膨らむという厳しい状況に追い込まれることになった。

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