ハチワレだけが言葉で感情を表現する
誠人くんが、「胸がいっぱいになりました」と言ったとき、短い言葉なのに、聞いているこちら側にもその“いっぱい”が伝わってきた。声は言葉を伝えるもので、言葉は心のうちを表現するものだ。澄んだ声、伸びやかな声、艶やかな声……いい声の定義は様々だが、心に響く声というのは、心がこもっている声ということなのかもしれない。現に、誠人くんはこちらの質問に対して、毎回少し考えてから言葉を選んで話す癖があるようだった。まだ子供だからということもあるが、表面的に取り繕うような発言を一切しないのだ。

「ハチワレを演じてみてビックリしたことは、このアニメの中で、僕しかしっかりしたセリフを喋るキャラクターがいなかったことです。みんなが(ちいかわの真似をして)『ふぅ』とか『んー』とか、(うさぎの真似で)『ウララララ』とか言ってる中(笑)、僕だけがみんなの気持ちをセリフで代弁したり、状況を説明したりしていた。漫画を読んだ時点で、だいたいはわかっていたんですが、やってみると想像以上でした。僕は元々滑舌があんまり良くないし、緊張すると焦っちゃうから、収録のときはゆっくりセリフを言うことを心がけています」
アフレコの前は、毎回怖いし緊張する。でも、音響監督とちいかわ役の青木さんと一緒にブースに入って、ハチワレの気持ちを想像すると、だんだん楽しくなってくる。最初はドキドキなのに、収録が終わる頃には「あー楽しかった!」と笑顔になるのだ。