2022年は、現在も審議が続く「24年度に向けた介護保険の見直し」が話題になった。今回は、見送りの方針になったようだが、その審議項目の中で、要介護1と2が「軽度者」として、国から地域の管轄になることが、9月末には「要介護1と2はずし」というTwitterのトレンドにはいるほど注目された。

現在87歳で認知症の父をもつ田中亜紀子さんは、「要介護1と2はずし」に大きな危惧を抱いたという。見直しの俎上に上った「要介護1と2」が、認知症の場合も「軽度者」と扱われることの違和感について、田中さんの父が要介護1だったときの驚愕の事件を振り返って伝えてくれた。今回は、現在「要介護3」で87歳の父のワンオペ介護中の田中さんが感じている、「もう一つの危惧」について、認定調査を例にあげてお届けする。

田中さんの父親は、82歳で「要介護1」のときに血の海を作った「おでこが骨事件」というのを起こしていた Photo by iStock
 

認知症における「認定調査」

私が感じている「要介護問題へのもう一つの危惧」、それは認知症の方たちの要介護、あるいは要支援の区分を決める「認定調査」のジャッジが、どれほど認定される方のリアルな状況を反映できているのか?ということだ。もちろん人間の行うことだから、すべて正確ではなくても仕方ないとは思う。そもそも医師にも多種多様な認知症の種類や症状、またそれがどう進んでいくかなどは正確に把握しづらいのではないだろうか。しかし、そのジャッジで要介護が決まり、家族の負担はもちろん、今回のように「軽度者」の範疇にはいることで、国の管轄からはずれる危険もあるなど、運命は簡単に左右されてしまう。

父親が認知症の診断を受けてからこの約6年、何度か、介護度の区分を決めるための認定調査を受けたが、そのたびごとに、現状を理解してもらう難しさを感じる。調査員の方からの質問や確認は、身体的な機能が聞きやすいイメージで、認知症の症状については、遠慮もあるのか、こちらからアピールしないとなかなか具体的な質問が少ない気がする。だが、実際、厚労省の公開している認定調査票を見てみると、身体機能と認知機能について問う質問は、それぞれ同じぐらいの数があるのを見て驚いたほどだ。また、認知症と一口にいっても様々な種類の病気があり、症状が違うので、質問内容も個別にはヒットしないものも多い気はする。

厚生労働省の「認定調査票」の一部