2022年9月末には「24年度に向けた介護保険の見直し」が話題になった。「要介護1と2」が、認知症の場合も「軽度者」と扱われることに違和感を抱いた人は少なくないだろう。だが、それ以前に「要介護」や「要支援」の区分とはどのように決まるのか。現在「要介護3」で87歳の父のワンオペ介護中の田中さんは、何度目かの認定調査を父親と共に受けることになった。そのときの体験をもとに、認定調査がどのようなものかの実例をお伝えする。

認知症の区分判定は難しい
要介護2に戻ったらどうしよう……前回の認定調査から3年たち、最近は身体機能の衰えも目立ってきた父は87歳になるが、期限切れに伴う認定調査への不安はぬぐえなかった。
なぜなら、これまでの認定調査からも、認知症の症状を相応にジャッジしてもらうことは、本当に難しいと思うからだ。
今年9月の認定調査では、自宅を訪れた調査員の方は、父への質問と私への質問とどっちが先でもいいというので、私からにしてもらった。それによって父への面談の内容が変わるかなと勝手に思ったから。
とりあえず、調査員の方に父の基本的な一日の生活ぶりから説明する。現在、平日は10時半から13時半まで3時間、看護小規模多機能型居宅介護の事業所への通所だが、それ以上長くは本人がいられない。13時をすぎると通所先の玄関にはりついてしまうので、長時間の滞在は難しい。自宅では基本は自室でテレビをみているが、勝手に外に出る危険はあり、すでに信号など守れないし迷子になるリスクもあるので、私が下の部屋で仕事を行い、玄関から勝手にでていかないように注意していること。
トイレ、着替え…調査員により「解釈」は変わる
「介助なしで、自分でトイレにいけますか?」には、答えはイエス。しかし普通の状態とは言いかねるので、そのことを説明する。基本、尿失禁があるので、トランクス型の紙おむつをつけているが、最近はトイレで失敗してズボンを汚すので、家では気が付いたら、洋服をぬいでトイレに入るようにその都度呼び掛けている。私がいつもいるわけではないので、父の使うトイレのドアに大きな張り紙をしているが、目に入らないのか、気にもとめない。なので、毎回、父がトイレにいく!と気づいたら、「洋服と下着脱いでから入って!」と声をはりあげなければならない。
紙パンツは一日に一度取り換えることになっているが、その瞬間に回収しないといけない。なぜかというと、それを自分の部屋に隠したり、トイレにおいてあると、次に履きかえる時に、またそれを履いてしまうのだ。当初はそのことに気が付かず、ごみに出す日に「毎日変えてるのに、なぜこんなにごみの枚数が少ないんだろう?」と疑問に思い、再利用しているからくりを解明したわけだ。そもそも「もったいない」とはきかえることを毎日拒否するので、そのたびに説得しなくてはいけない。
「一人で着替えはできますか?」という質問には、着脱そのものはできるが、着替えという一連の行動はできないという答えだ。父は脱いだ洋服を手から離した瞬間、それが「脱いだもの」とわからなくなるようで、またそれを着てしまい、用意してある着替えを洗濯機にいれるのだ。あるいは脱ぎたてのものを洗濯物を干している場所にかけたり、タンスにしまったりするので、脱いだ瞬間に、とにかく私が回収し,洗濯機に入れる必要がある。私自身も、父が何を着ていたか、いちいち覚えていないので、その場で処理しないと、同じものを着ていても気づきにくい。

着替えていないで通所に行くと、匂うと注意されることがあるので、きちんと日々着替えないといけないのだ。これに対し、前回の調査員の方は「でも着替え自体は介助なく、できてますね。できるかできないかなど、選択肢に丸をつけるのでごめんなさい」といっていたが(選択肢には見守り等、の項目もある)、今回は着脱のみを「一人では着替られていませんね」といってくれた。基本的に、質問の答えの選択肢以外の説明は別紙の特記事項にかかれるようだ。