大手や中堅の保育会社では保育士が辞めると、園長の査定に響いてボーナスなどの報酬が下げられるケースもある。また、保育業界では、受け持ったクラスに責任を果たそうと、年度末までは働いて辞めるというのが慣例とされてきたが、ここ数年は、それが崩れて年度途中での退職が増えていった。入社してわずか数ヵ月で辞めていくなど、今や珍しくない。
何の連絡もなしに欠勤して音信不通になるケースもある。1年程度で転籍を繰り返し、30歳くらいの時点で10ヵ所あまりの保育園運営法人を渡り歩くため、履歴書の職歴欄が1ページでは足りないというケースもザラになっている。前述の園長は続ける。
「そもそも資質のない保育士が急増しています。若い正社員の保育士は、『この子、ウンチしてまーす』と言って、パートの保育士や保育補助者に任せてしまいます。嘔吐の処理も、食事の後片付けも清掃も全て『汚いからやらない』といわんばかり。パートに任せて自分たちはおしゃべりに夢中なんです。
トイレの介助にしても、遠くに聞こえるような大声で『〇〇ちゃんっ!ちょっと、ねーっ、パンツあげてっ!パンツ上げてって言ってんでしょっ!』と怒っているのが聞こえてくる。
園児が咳き込むのが聞こえてきたので私が顔を出すと、園児が本の切れ端を誤飲していました。一事が万事、指導が必要なんです。私が事務室にいない時、『園長うるさいんですよねー』と事務員に不満を言っているようでしたが、園児の安全には変えらないので指導し続け、園長の私も保育室に入って保育しました」
問題を知った保育士や保護者はどうする?
保育士の有効求人倍率は、保育園の建設ラッシュがひと段落している2022年7月でも2.21倍あり、全職種平均の1.26倍を大きく上回る。2019年のピーク時には3.86倍もあったのだから、保育士1人が手をあげれば約4ヵ所の園が門戸を開いていることになる。