「ほいくえん、いきたくない」
ただ、保護者にとっては「子どもは人質」。何か言って、冷遇されることが怖くて言い出せない保護者もいる。勇気を出して行政に相談、通報しても、自治体の保育課の対応には差がある。「保育に口を出せない」「証拠がないと虐待の判断が難しい」など、曖昧にされることが少なくない。今回の静岡県警による保育士の逮捕、裾野市長による園長の刑事告発は、迅速な対応だったのではないだろうか。
不適切な保育、虐待、暴行を放置すれば、やがて子どもの死につながる可能性がある。子どもの命を亡くしてからでは遅い。その前兆を知った時にどうするのか。この問題を機に真剣に向き合い、行政は覚悟をもって対応しなければならない。
「ほいくえん、いきたくない。せんせい、やさしくない」
もし、子どもがそう言った時、その言葉がSOSである場合もあり、注意を払う必要がある。
人手不足などを背景に「良い保育」を実践できる現場が減りつつあるなかで、裾野市のケースを機に、何が不適切な保育で何が虐待なのか、正面から見つめ直す時がきている。そして何より、何か疑問を持った保護者と保育園側が、気軽に話し合い、お互いに学び合おうとする雰囲気作りも必要だ。
次回以降、保育の質を劣化させる制度の問題や少なすぎる保育士配置基準について、改めて解説する。