ブランド価値が低下
大きな鉄製の門扉。その上には「萬春亭」と彫られた看板が掲げられている。扉の両脇には狛犬が鎮座し、通り沿いには中国では幸運を招くとされる槙と松の木が植えられている。いずれも、古くは中国貴族の屋敷によく使われていた意匠だ。
近隣住民のひとりはこう証言する。
「地元としては、地域の景観に関わる問題は、自治会などへ事前に相談するのが住民間の通例です。しかし、この施設はそういった話は一切なく、突然できたのです」
不安に思った近隣住民たちは、一度話し合いを持とうと、この萬春亭に出向いたという。その場にいたのは中国籍の男性。そこで初めてこの建物が、中国人観光客専門の宿泊施設だと判明したという。前出の住民が続ける。
「一部ですが、土地をはみ出て樹木を植えている箇所が見つかりました。『それはだめですよ』と注意したのですが、『日本語分かりません……』ととぼけるだけで、埒が明きません。コロナ禍が収まったタイミングで営業を開始するそうですが、中国人が集団で大挙してくれば、箱根のブランド価値が下がるのでは」
「週刊現代」2022年12月10・17日号より
この前編記事では中国の富裕層による日本の温泉地の買収と、その問題を紹介した。後編記事「日本は都合がいい…ここにきて中国人が「箱根」温泉旅館の買収に殺到している本当のワケ」では中国人による温泉街買収の狙いについて引き続き紹介する。
京都、安曇野、熊野古道、しまなみ海道、初夏の富良野、宿場町、古戦場、絶景の駅……また訪ねたい日本の名所をカラー写真で味わう、週刊現代別冊 週刊現代プレミアム 2023 Vol.1 もう一度、日本を知る旅へ(講談社 MOOK)が好評発売中!