巻き込まれないためには
以上が、筆者が聞いた元暴の証言である。裏社会は、物理的に存在するものではなく、社会的に存在する。だから、闇金から金を借りるという選択により、無意識に裏社会の扉を開けてしまっている可能性がある。
あるいは、秋の夜長に耐えかねて、ちょっと試したデリヘル嬢から情報が洩れて、タタキのターゲットになるかもしれない。山ちゃんのケースからもわかるように、「ヤクザの友人が居るから、怖がって手を出す奴はいないだろう」など、もはや昭和時代の幻想である。
彼が話してくれたのは2010年前後のエピソードだが、筆者が見ている限り、昨今の裏社会は、より剣呑になっている。ちょっとした油断や判断ミス、問題解決の選択を誤っただけで、法律の保護が及ばない暗く深い穴に落ち込む可能性がある。
コロナ禍は、日本における裏社会へのアクセスを容易にした。筆者が10代の頃に流行った「うちの子に限っては大丈夫」ではないが、「自分は大丈夫」などと過信しないことである。企業コンプライアンスだけに留まらず、個人レベルで、パーソナル・コンプライアンス意識を高めることが必要な時代になっている。