正しい気象の知識は、命を守るために欠かせません。知ってるようであやふやなアレコレを、気象予報士であり、防災士の資格も持つ斉田季実治さんに聞きました。

Q1 今、日本の気象はどうなっているの?

簡潔に表現すると「気温が上昇して、大雨が降るリスクが高まっている」ということです。気象庁のデータによると、全国の日最高気温35℃以上(猛暑日)の年間日数も、全国の1時間降水量(50mm以上)の発生回数も、年によって変動はあるものの過去より増加する傾向にあります。
気温が高いと空気中に含む水蒸気の割合が増え、雨雲が発生しやすくなります。すべてが温暖化の影響とは言い切れませんが、同じ場所に次々と積乱雲が発生して大雨を降らせる「線状降水帯」による災害が目立つことを考えても、気温の上昇は近年増えつつある大雨に密接に関係していると思います。
近年発生した主な広域的水害
・2017年 九州北部豪雨(平成29年7月九州北部豪雨) 死者42名
・2018年 西日本豪雨(平成30年7月豪雨) 死者237名
・2019年 台風19号(令和元年東日本台風) 死者104名
・2020年 熊本豪雨(令和2年7月豪雨) 死者84名
Q2 “大雨”って、どういう状態?

予報用語には「激しい雨」「猛烈な雨」など様々な表現があります。「猛烈な雨」とは1時間雨量が80mm以上で、息苦しくなるような圧迫感のある状態。50~80mm未満は「非常に激しい雨」で、滝のように降り続く状態です。雨量が50mmを超えると災害の危険性が高まります。
また近年、大きな被害をもたらす「線状降水帯」は、そうした雨を数時間にわたって降らせる非常に発達した雨雲群のこと。気象庁は線状降水帯の発生が予想された場合に、半日程度前から「線状降水帯」というキーワードを使って警戒を呼びかけます。
Q3 警報や警戒レベルなど、情報が多すぎ!

従来、災害時には気象庁から警報、市区町村から避難指示など様々な情報が発信されてきましたが、受け手である住民に正しく危険度が理解されず、被害が出てしまったということもありました。こうしたことを受けて国は住民が災害発生の危険度を直感的に理解し、的確に避難行動がとれるよう、避難情報や防災気象情報などを5段階の「警戒レベル」を用いて伝えています。
また2022年には災害の危険度を地図上でリアルタイムに確認できる気象庁の「キキクル」も、「警戒レベル」の色分けに対応するよう統合されました。「黒(レベル5)=災害切迫/直ちに安全確保」「紫(レベル4)=危険/危険な場所から全員避難」といったふうに、警戒レベルの意味する状況と、とるべき行動を頭に入れておくと、情報を整理しやすくなります。